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週替わり日記(2006-2007) ブログトップ

卒業生・在校生のプロフィール [週替わり日記(2006-2007)]

 2006-07年度には、LL.M.プログラムに5名、J.D.プログラムに1名の日本人が在籍しました。人数は合計6名と、他校に比べて少ないですが、社費・私費、弁護士・官庁・民間・研究者など、バラエティに富んでいます。

Yさん
• 在籍プログラム: LL.M.
• 留学形態: 事務所費(一部)
• 出身業種・業務経験:某民間企業と法律事務所にそれぞれ3年弱勤務
• 海外経験: なし
受験体験記: http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2006-08-21-4
週替わり日記: http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2006-09-25
週替わり日記番外編その2: http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2007-01-09
週替わり日記その2: http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2007-02-26

Mayさん
• 在籍プログラム: LL.M.
• 留学形態: 私費
• 出身業種・業務経験:弁護士(53期) 法律事務所3年半、商社法務部1年
• 海外経験: 2005年8月~2006年7月 アメリカ国内の他ロースクールにビジティング・スカラー(客員研究員)として在籍
受験体験記: http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2006-08-21-5
週替わり日記: http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2006-10-01
週替わり日記その2: http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2007-01-28

Hideさん
• 在籍プログラム: LL.M.
• 留学形態: 社費
• 出身業種・業務経験: 某金融機関に7年強勤務
• 海外経験: 特になし
受験体験記: http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2006-08-21-6
週替わり日記: http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2006-09-10
週替わり日記その2: http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2007-02-05

Kさん
• 在籍プログラム: LL.M.
• 留学形態: 私費+奨学金
• 出身業種・業務経験: 某私立大学の法学部助手(3ヶ月間)
• 海外経験: 海外旅行(米国10日間)
受験体験記: http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2006-08-21-7
週替わり日記: http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2006-09-05
週替わり日記その2: http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2007-02-19

T.T.さん
• 在籍プログラム:LL.M. (2006年度)
• 留学形態: 公費+私費
• 勤務先:官庁
• 海外経験: なし(海外旅行の経験が多少ある程度)
受験体験記: http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2006-08-21-8
週替わり日記: http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2006-09-17
週替わり日記その2: http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2007-02-12

Mさん
• 在籍プログラム: J.D.3年生
• 留学形態: 私費
• 出身業種・業務経験: 某民間企業に5年強勤務、国際法務担当含む
• 海外経験: 出張(英国・中東)数回、高校時代に米国ホームステイ1ヶ月間
受験体験記: http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2006-08-21-9
週替わり日記: http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2006-08-28-3
週替わり日記番外編 マスターズ観戦記: http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2007-04-11
J.D.攻略法: http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2007-01-24
J.D.攻略法その2: http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2007-02-03
J.D.攻略法その3: http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2007-02-10


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一週目 Mの場合 [週替わり日記(2006-2007)]

 初めまして。一番手をおおせつかりました私は、J.D.プログラム3年生(3L:スリーエルと読みます)のMと申します。この週替わり日記では、在校生6人が一週ずつ担当し、ありのままの留学生活を描いていきたいと思います。ナッシュビル生活も今年で3年目となり、カントリーミュージックなしでは生きられない体になってきました、などということはありません。もっとも、上の階の住人は、今日も大音響でエルビスプレスリーを聞いています。

 しばしば、J.D.プログラムの3年間について、「1年目は死ぬほど怖い、2年目は死ぬほどつらい、3年目は死ぬほどだるい」などと言われます。大げさなようですが、私の経験上、これはかなり的を射ています。1L(ワンエル)の成績は、将来の就職先を決定する重要な要素なので、だれもが懸命に勉強します。教授のソクラテスメソッドも厳しく、完璧な予習が要求されます。毎日プレッシャーと戦う日々でした。そして、2L(ツーエル)になると、学校の勉強だけでなく、就職活動・ジャーナル活動・論文の執筆などの負担が増え、肉体的にも精神的にもつらい時期が続きます。自分をいじめることに喜びを感じる方にとっては、たまらない2年間でしょう。

 しかし3Lになると、すでに卒業後の就職先も決まっている学生が多く、あまり勉強をがつがつとする雰囲気ではありません。死ぬほど怖くそしてつらかった1Lと2Lの反動もあって、なるべく楽な科目を取り、単位を落とさない程度に遊びまくる学生もいます。私はと申しますと、毎日ゴルフをしたいという誘惑と戦いつつも、比較的重めの授業やジャーナル活動など、それなりに忙しい日々を送っています。

1. 週間スケジュール

2. 学校生活

(a) 授業

 当校でJ.D.を取得するためには、3年間で88単位の取得が必要です。私の場合は、あと29単位取得しなければなりません。来学期を少しでも楽にして、毎日ゴルフに勤しむため、もとい、法律以外のさまざま教養を身につけることに時間を使うため、今学期は規程上限の17単位5科目を履修しています。NYにある国際取引を得意分野とする弁護士事務所に、卒業後の就職がかろうじて決まっているため、なるべく関連の深い科目を選択しました。

 授業がすべて午前中に収まっているので、一見楽そうに見えるかもしれません。しかし、水曜日を除き、授業は朝8時という容赦ない時間に始まります。特に、月曜日と火曜日は、間に10分ずつの休みを挟んで3科目が連続しています。時々混乱して自分が何の授業を受けているのかわからなくなったり、全ての教科書(合計7冊、岩のような重さ)を持ち運ばなければならず腰痛になったりしますので、こういう授業のとり方はお勧めしません。

 最初の一週間は、「履修おためし期間」とされており、いろいろな授業に出て感触を確かめることができます。「明日までに50ページ読んでくるように」などと言ったりする教授の授業は、二回目から極端に人が減ります。昨年の話ですが、地元の弁護士の方が教える授業で、私は彼の言っていることが、極端な南部なまりのため、一言一句もわかりませんでした。私の名誉のために言っておきますと、両隣に座っていたアメリカ人学生達も、「意味不明だ」と言っていました。私は当然ほかの科目をとることにしましたが、教授の名誉のために言っておきますと、彼の言っていることが解読できる生徒にとっては、非常に実践的で面白い授業だったらしいです。

(b) ジャーナル

 ジャーナルとは、課外活動の一つとして、2Lと3Lの学生が編集する法律論文集のことです。ジャーナルのメンバーは、1L時の成績と1L終了時に行われるライティングコンテストの結果によって選ばれます。編集委員である学生が、全国の学者や実務家から送られてくる論文の、選択から編集まですべてを行うという強大な権限を持っているところに特徴があります。特に学者にとって、ジャーナルに論文が掲載されることは大きな実績となるため、学生が正教授昇進のカギを握ることも多々あるのです。普段ソクラテスメソッドで教授にいじめられている生徒にとっては、「あんたの論文は載せないよ」と仕返しをするチャンスです(が、そんなことはしません)。

 当校には3つのジャーナルがあり、私は国際法を主に扱うJournal of Transnational Lawに所属しています(International ではなく Transnational というところに、こだわりを感じます)。メンバーは、2Lと3Lの合計65名です。そのうち10名の3Lが、編集役員としてジャーナルの実質的な経営に責任を持っています。私はその一人のExecutive Authorities Editorとして、2Lの指導監督および引用の正確性に最終的な責任を負っています。Executive Authorities Editorという自分の肩書きをすらっと発音できるようになることが、私の卒業までの最大の目標です。

 ジャーナルにおける2Lの「ヒラ」の仕事は、論文の引用一つ一つについて、形式的および実質的な正しさをチェックすることです。形式的なチェックのルールはBluebook という400ページほどの冊子に詳細に定められているため、こうした作業のことをBluebooking(ブルーブッキング)と呼ぶこともあります。Bluebooking はジャーナルの過酷な長時間労働の代名詞ともなっています。しかし、私はこれが得意だったため編集役員になることができたので、私にとっては「座右の書」とも言え、常に肌身離さず持ち歩いています。

 当ジャーナルには私、レイチェル、ラトーヤという3人のExecutive Authorities Editors がおり、仕事を分担しています。二人とも女性で(編集役員10人のうち、編集長を含む6人が女性です)、大変優秀で気が強く、早口で自分の意見を主張します。二人の議論がヒートアップしてくると、私のリスニング能力では何を言っているのかわからなくなることもありますが、別に喧嘩しているわけではないので、私はそっと席をはずします。

 今週は早速2Lのメンバー対象のオリエンテーションを行い、役割や仕事の仕方を説明しました。期日を守ることの重要性を繰り返し説明しましたが、相手はアメリカ人なので、(たとえロースクールの学生、選ばれたジャーナルのメンバーといえども)どこまで期日を守るかは未知数です。一般に、彼らは口が達者で、さも自分は悪くないかのように言い訳するのが大変上手なので、これから厳しく指導していかなくてはなりません(できるのか?)。

3. 学校外生活

 授業やジャーナル活動に忙しい毎日ですが、金曜の午後はリフレッシュのための時間に使っています。今週は親友の一人とゴルフに行こうと話していました。彼は地元テネシーの出身で、卒業後もナッシュビルの名門事務所に就職が決まっています。ところが木曜日にその事務所のパートナーに高級ランチにさそわれホイホイついていったところ、帰りがけに「じゃあこれ月曜日までにやっといてね」と仕事を渡されてしまったとのこと。仕方がないのでレインチェックを受け取り(野球の試合などで雨天順延になった場合、次回の試合をただで見ることができるチケットのこと。この場合は、また来週やろうという意味です)、今回は一人で行ってくることにしました。

 ナッシュビルには土地が余っており、市内・近郊に20箇所近いゴルフ場があります。メンバー限定の名門コースもありますが、ほとんどは公営で、9ホール10ドル、18ホール20ドルといった格安でのプレーが可能です。公営で格安といっても、コースはきれいに手入れされています。しかも空いているので、特に予約もいらず、思いついたらふらっと行ってプレーを楽しむことができます。

 さて、今回お邪魔したのは、学校から車で10分程度、ベルミードという高級住宅街のはずれにある、パーシーワーナーゴルフ場です。ベルミードというのはナッシュビルでも1・2を争う美しい地区で、フットボールができそうな庭のあるおしゃれなお屋敷が立ち並んでいます(かの二○ール・キッ○マンも住んでいるそうです)。住宅街を奥まで進みますと、パーシーワーナー公園という巨大な森が見えてきます。ゴルフ場はその一角に佇んでおり、「ほーこんなところに収納が、いやゴルフ場が」といった感じです。こういった高級住宅街や、気軽にゴルフをできる環境を見ると、はたして日本って本当に豊かなんでしょうか、などと考えさせられてしまいます。



 1時ころからゆったりと9ホールを堪能し、3時には家にもどってシャワーを浴びることができました。その後軽く昼寝をして、夜は同級生のアメリカ人や中国人たちと近くのモールに行き、食事と映画を楽しみました。半日これだけ遊んでも、使ったお金は合計で30ドル程度です。ちなみにこのモールはなかなかの高級志向で、最近はティファニーとルイ・ヴィトンが入居し、一部でニュースになりました。再び私の名誉のために言っておきますと、こんな余裕のある時間のすごし方をしているのも金曜日の夜だからで、週末はまた予習とジャーナルの仕事が待っています。

 次回の週替わり日記の担当は、最年少日本人LL.M.、未来の大御所 Kさんです。お楽しみに!

 Mのプロフィール・受験体験記はこちらです。
 http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2006-08-21-9


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二週目 Kの場合 [週替わり日記(2006-2007)]

 こんにちは。LL.M. に在籍するKと申します。この日記(8月27日~9月3日)は、私がナッシュビルに到着してからちょうど1ヵ月が経ち、授業の開始から2週間が経過した時点のものです。私は、日本で研究職に就くことを念頭に留学している者で、行政法や環境法に関心を持っています。こちらに来てから間もないこともあり、授業や生活において不慣れなことが多いのですが、そうした雰囲気が読者の皆さんに少しでも具体的に伝わったらうれしいです。それでは、早速スタートです!

1.週間スケジュール

2.授業の様子
 LL.M.の卒業要件としては、最低17単位をとらなければなりません。私は、来学期に時間をかけてリサーチペーパーを書きたいと考えているので、今学期は5科目14単位をとることにしました。他の人々から「きついと思うよ」と忠告を受けたのですが、興味深い授業が多かったこともあり、思い切って登録しました。正直なところ、受講したいと思う授業が他にもあり、泣く泣く諦めた次第です。この大学のプログラムには、私にとって魅力的な科目がいくつもありました。ただ授業が始まると、やはりこれくらいの登録数が自分の限界だな、と痛感しましたけどね。
 さて、月曜日と火曜日は3つの授業があるため、とても大変です。宿題としては、1科目につき20頁程度の読書が求められます。私の場合、内容を正確に理解して授業に臨むには、1科目につき最低3時間以上の予習が必要です。友達から「いつも図書館にいるね」と言われますが、それでも平日には授業の復習ができません。そのため、週末にその時間をとっています(ただ、意志が弱いため、今のところ他の用事で実現していません…)。
 授業については、素晴らしいと感じています。どの科目の教授も、エネルギッシュかつ丁寧に授業を進められます。僕は、自分の研究との関係もあり、とりわけLisa S. Bressman教授の「行政法」とW. Kip Viscusi教授(リスク規制分野の超有名人)の「規制の経済学と反トラスト法」に強い関心を持って授業を受けています。ただ残念なことに、どれほど正確に授業内容を把握できているかと問われると、「実はよく分からないことが多いのです」とうつむいてしまいます。とくに、教授とネイティブ学生の間で予想外の議論が始まると、ぜんぜん対応できません。仕方がないので、みんなが真剣な顔をしているときは真面目な顔をし、みんなが笑ったときは負けじと爆笑しています。そうしていると、ときどき何だか演劇の練習をしているような妙な気分になります。また、先生が生徒を指そうとして見回しているときに、反射的に目を逸らせてしまったりして、ちょっと悲しい気分になることもあります。
 しかし、こうした危機的状況にある私が、困ったなあと途方に暮れていると、それを察知したアドミッション・オフィスのシンシアさんが、助言者(mentor)を紹介してくれました。彼女は、渡米前からLL.M.学生の生活面から学習面まで、幅広く面倒をみてくれているのです。私はとくに憲法の授業で困っていたのですが、彼女がクラスの人にメールを送り、私の助言者を募ってくれました。火曜日にJさんという親切な助言者と会い、今後のことを相談しました。さらに、行政法の授業を録音するための手はずもシンシアさんが整えてくれました。ここでは、録音は原則として禁止されており、例外を認めてもらうには教授の特別許可が必要なのです。本当に、シンシアさんに感謝感謝!の毎日です。金曜日の授業が終わると、まだうまく泳げない頃に深いプールを泳がされて何とか泳ぎ終えたときのような、深い安堵感に包まれます。

3.学校外生活
 さて、そうした苦しい日々を終えた途端、待ちに待った自由時間がやってきます。今週は、金曜日にホームパーティーがあり、同級生と語らいつつ美味しい日本食を楽しむことができました。HideさんとMayさんはとても料理上手なのです。翌日は、インドで検察官をしている同級生のSさんが自宅に招いてくださり、本場の料理をご馳走してくれました(写真参照)。彼は心優しい愉快な友人で、最近よくご馳走になっています。こうした素敵な友人ができると、留学してよかったなあ、としみじみ思います。


 ところで、私は車を持っていないため、バス(平日20分に1本、休日1時間に1本程度)に乗って買い物に行っています。学生証を持っていれば、無料で乗ることができます。魚を売っているハリス・ティーターというスーパーに行く際に(学校前のバス停から10分くらい)、よく利用しています。また他にも、車をもっていない友人たちとタクシーに乗って買い物にでかけることもあります。自国で運転されていた方は車がないとかなり不便に感じられるようですが、私は日本でも運転していなかったので、それほど苦痛に感じていません。もちろん、車があれば世界はグッと広がります。そうしたお話は、これからの日記で他の方々がたっぷりと紹介してくれるはずです。どうぞお楽しみに!!
最後になりますが、週末の遊びすぎにはくれぐれもご注意くださいね。この日記を書いている日曜日の夜11時の時点で、私はまだ宿題が終わっておらず、夏休み終了前日の小学生の気分を味わっています。もうちょっと早くやっておけばよかったよ、ちぇっ!という気分です。

 さてさて次回は、料理上手のHideさんの登場です。どうぞご期待ください!

 Kのプロフィール・受験体験記はこちらです。
 http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2006-08-21-7


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三週目 Hideの場合 [週替わり日記(2006-2007)]

 LL.M. のHideと申します。私はサマースクールから参加しているため、渡米してからちょうど2ヶ月が経過しようとしています。もともと英会話が全然出来なかったのですが、英語漬けの毎日のおかげで、留学生同士で意思疎通をはかるには事欠かないレベルにまで上達しました。ただ、街人の南部訛りの言葉は未だに理解できませんし、夢のなかで日本語を話しているので、まだまだです。

1.週間スケジュール

2.授業の様子
 今学期は4科目13単位を履修しています。(私は論文を書かないコースなので、卒業要件は23単位です。)私は卒業後にNY Bar Examを受験する予定なので、Barの主要科目である契約法の授業を履修しています。
 契約法はJD1年生の必修科目になっており、約100名のJD(アメリカ人)に混じって講義を受けています。LL.M.からは中国人、Yさんと私の3名だけが履修しています。この授業は典型的なソクラテスメソッドで、教授がビシビシ指名し、たたみかけるように質問を浴びせてきます。留学生だから指名しないといった救済措置はありません。また、教授の話すスピードが非常に速く、教授と学生との間で議論が始まると、話についていくのが大変です。(ネイティブであるJDの学生でもついていくのが大変だそうです。)
 授業の中心は、事前課題になっているCase(判例)の概略を学生に説明させ、そこからどんどん仮説を派生させていきます。教授は厳しいなかにも愛情があふれており、当てられた学生がよくわからず困っているときには、自分で答えにたどりつけるよう、しっかり誘導してくれます。目下の目標は、指名されたときによどみなく回答できるようになることです。(道遠し・・・)

3.学校外生活
 JD3年生は学期中も楽しそうな週末を送っているようですが、語学力にハンデのあるLL.M.生に休みはありません。とはいえ、毎週金曜日にはどこかでパーティーが開催されるので、気分転換と英会話の練習のため、できるだけ顔を出すようにしています。(平日は机に向かいひたすらCase Bookと格闘する日が続いているので、何もしないと気が滅入りそうです。)私は、パーティーで日本料理を作ってみんなに振舞うようにしています。料理は非常によい話のネタになりますし、みんな自分のことをおぼえてくれて一石二鳥です。ちなみに、先日はいなりずしを作ったところ、あっという間に売り切れました。料理人冥利につきます。
 サマースクール期間中に、週末を利用してWhite Water Rafting Tripに参加しました。VandyのOutdoor Recreation Center主催のTripで、テネシー州の東側にあるOcoee Riverというところに行きました。ナッシュビルからは車で3時間半ほどのご近所です。Ocoeeはアトランタオリンピックのカヤック会場だったらしく、いいWhite Waterがあることでその道では有名なのだそうです。

 私たちが参加したのはFull-day Tripで、朝9時に出発しランチ休憩をとったあと、また川を下り、午後3時にようやく終了となりました。午前は急流(激流?)が何か所もある迫力満点のコース、午後は大自然を満喫する癒し系のコースで、一度で二度美味しいツアーでした。
 強いスコールが振り出し、一時視界不良にもなりましたが、それもご愛嬌。衝撃で川に転落したり、自分から川に飛び込んで泳いだり、子供のように無邪気に遊びました。最初はビビって腰が引けていた韓国人のJMさんも、最後は積極的に楽しんでいました。このように、ちょっと足を伸ばせば都会の喧騒から離れて大自然の中で思いっきり遊べるというのが、テネシーの魅力なのだと思います。
 次週は、スーパーマンそっくりのT.T.さんです。どうぞお楽しみに!

 Hideのプロフィール・受験体験記はこちらです。
 http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2006-08-21-6
 


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四週目 T.T.の場合 [週替わり日記(2006-2007)]

 皆さん、こんにちは。LL.M. のT.Tと申します。7月の前半にNashvilleに来てから、約2ヶ月半が経過したところです。私も、Hideさん同様、ロースクールの授業が始まる前にサマースクールを受講しました。サマースクールについて少し触れると、私たちが受講したバンダービルト大学のサマースクールは、ライティング能力とプレゼンテーション能力の向上を主眼として行われました。特に、ライティングの能力は、ロースクールを卒業するために必要不可欠なので、サマースクールへの参加は、私にとって大変役に立ったと感じています。
 サマースクールの期間中も毎日宿題に追われていたのですが、ロースクールが始まって以降、サマースクールの時とは比較にならないほど多くの宿題に追われています。私は、元々英語ができるほうではなく、「日本にいた時にもっと英語の勉強をしておけばよかった。」と痛感しています。英語がそれほど得意でないと感じている方々は、私のようにならないよう是非頑張ってください!

1.週間スケジュール

2.授業の様子
 私は、今学期5科目13単位を履修しています。(論文を書かないコースなので、卒業要件は23単位です。)また、アドミッションオフィスがLL.M.の学生用に特別にアレンジしてくれた英語の授業にも参加しています。この授業は、単位には換算されませんが、英語の能力が低い私にとっては、大変貴重な授業です。
 私は、自分の仕事への関連性と興味関心の高さを勘案して授業を履修しました。履修したい授業は他にもたくさんあったのですが、現状では、13単位分の授業についていくことで精一杯です。
 授業については、どの教授も大変熱心であり、学生も非常に積極的に授業に参加しています。私が履修している中で特徴的な授業は、地方自治法(正確には、Local Government Lawといいます。) です。この授業には、15名程度の少人数の学生しかいません(LL.M.の学生は、私1人だけです。)。ゼミのような感じで、教授と学生あるいは学生同士の議論を中心に授業が進められていきます。私が抱いていたロースクールのイメージは、「学問を学ぶ」というよりも「専ら弁護士を養成する」というものだったのですが、この授業を履修してそのイメージがかなり変わりました。しかし、残念ながら、英語能力の限界から、アメリカ人の学生と議論をすることは困難であり、毎回もどかしい思いをしています。教授の質問が分からない時もあり、当面、教授の質問にきちんと答えられるようになることを目標にして頑張っていこうと思っています。当初、「本当にこの授業についていけるのだろうか」という不安を抱いたのですが、授業開始から4週間が経過し、徐々に慣れてきたこともあり、今では授業を楽しむことができるようになりました。
 また、ロースクールの学習環境は非常に恵まれています。例えば、ロースクールの図書館は、日曜日から木曜日までは午前0時まで、金曜日及び土曜日は午後10時まで開いています。私も、この好環境をフルに活用して、しばしば遅くまで図書館で予習をしています。

3.学校外生活
 先週、Hideさんが書いていたとおり、LL.M.の学生には基本的に休みはありません。しかし、最近では徐々に授業に慣れてきたということもあり、私は、毎週金曜日の夜は、パーティーに参加するなどしてリラックスするよう心がけています(パーティーへの参加は、英会話能力の向上のための貴重な機会でもあります。)。また、毎週土曜日は、勉強以外のことに時間を使うようにしています。
 先週の土曜日、Nashvilleから50キロメートルほど離れた郊外にある教会で開催された地域住民主催のパーティーに招待され、カントリーミュージックの生演奏を聞きながら、地域の住民の方々が作った料理をごちそうになってきました。


 

 若者・老人を問わず地域住民が集まり土曜日の午後を楽しんでいました。時の流れも大変に緩やかに感じましたし、アメリカ人の贅沢な休日の楽しみ方を共有することができました。北部の大都会では体験できない「古き良き南部」の世界の一端を体験することができたような気がします。
 次週は、私たち(今年度の日本人のLL.M.の学生5人)のボスYさんの登場です。どうぞお楽しみに!

 T.T.のプロフィール・受験体験記はこちらです。
 http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2006-08-21-8


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五週目 Yの場合 [週替わり日記(2006-2007)]

 皆さん、こんにちは。LL.M. のYです。6月の末に単身でNashvilleに来てから、約2ヶ月半が経過したところです。一通り,生活のセットアップをした後,8月半ばから妻と,もうすぐ2歳になる子供が合流しました。私は,学校から車で15分弱程の家族向けのアパートに住んでおり,家賃は日本に住んでいたときとそう変わりませんが広さは約2倍,プールやトレーニングジム,洗車場なども付いていて,とても充実しています。目の前には大きい公園があり,夏の夕方には蛍も飛んでいました(日本ではもう何年も見ていませんでした)。子連れの方にはもってこいの環境です。
 また,このアパートにはVandyのMBAやMedical(医学部)の家族の方が多く住んでおり,妻の日本語でのお付き合いや生活情報の取得などは事欠きません。さらにアパートから車で5分のところ(学校より近い!)にゴルフ場(McCabe Golf Course)があり,9 Holes $10で回れますので,心ゆくまでゴルフを堪能できます。また,徒歩5分のところに,教会が経営している評判のいい保育園(プレ・スクール)があり,来月から子供を預ける予定です。その他,VandyはMedicalも評判が高いので,子供が病気や怪我をした場合でもそこのChildren’s Hospitalで安心して治療を受けられます。学校からやや離れたところに住んでいるため車は必需品となりますが,テネシー人はPoliteなためクラクションをならす車は格段に少なく,安心して運転ができます。

1.週間スケジュール

 自宅には小さい子供がいるため,平日は,夕飯をとりに一旦帰宅するほかは専ら図書館にこもっています。週末のうち、土曜日の半日程度、家族サービスの日です。最近では,Cumber land 川のShow Boat(船の上で食事をしながらカントリーミュージック等のショーを見る)に乗ったり,動物園やBroadwayの公演などにいったりしています。

2.授業の様子

 私は、今学期4科目14単位を履修し、その他LL.M.の学生用の英語の授業に参加しています。その中でも、国際商取引(International Business Transaction)は全米トップクラスの法律事務所の弁護士による授業です。たくさんのリーディングアサインメント(毎回30~40頁)や課題もでますし、LL.M.の学生でも容赦なく当てられます。しかし,非常に実践的で緊張感にあふれる授業であり,気に入っています。たとえば、プロジェクト・ファイナンスを取り扱ったときには、「第三世界に融資したときに、レンダーがポリティカル・リスクをヘッジするためにどのような手段があるか。」「IMFはその中でどのような役割を果たすか。」などの質問を次々に少しずつ事例を変えたりなどして生徒に答えさせていきます。日本でいくらか実務をかじっていた私にとっては魅力的です。

3.学校外生活

 妻子を連れてくると、そのケアが必要になりますので,独身者にはない負担を伴います。しかし、妻子を通じて、Law School生以外のいろいろな人(現地の日本人やアメリカ人の家族など)と知り合うことができれば、それは逆に非常に大きなメリットになります(と,大学時代のゼミの先生がいっていました)。そのような意味で、地方都市であるNashvilleはフレンドリーで世話好きな現地の人が多いので、家族連れにはお薦めです。

私の妻は、平日はVandyのELC(English Language Center)で、また週末は近くの教会で、英会話の授業を取っています(教会の方は無料。託児施設も併設されています)。そこで,知り合った友達の一人で,現地のNative Americanと結婚し,Nashvilleに住んで4年になる日本人のSさん(及び旦那さん)と,水曜日近くのレストランで食事をしました。旦那さんのMさんは数年間,日本の中学校で英語の先生をしていたこともあり,かなりの日本通です。結婚式も神前式で挙げたそうで,その時の外国人ならではのエピソードなどで盛り上がりました。このような機会は,現地の方の生の生活を知ることもできますし,英会話の勉強にもなります。
 
食生活についてですが,普段,我家では和食が中心です。こちらに来る前は,日本の食材が手に入らないのではないかという不安がありましたが,杞憂でした。アパートから車で10分のところに,日本食材店があり,また近くのスーパーでも日本の食材の多くは手に入ります(ほと んどのスーパーに寿司コーナーがあります!)。また,日本食のレストランも自宅から車で10分以内の範囲で少なくとも4,5件はあります。食料品の物価は日本より格段に安く,特に肉は価格・質とも比べものになりません。今後の課題は,とんこつラーメンのおいしい店を探すことです。

 次週は、日本人LL.M.紅一点のMayさんの登場です。どうぞお楽しみに!

Yのプロフィール・受験体験記はこちらです。
http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2006-08-21-4


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六週目 Mayの場合 [週替わり日記(2006-2007)]

 こんにちは。LLMに在籍中のMayと申します。授業がはじまり6週間、あわただしいながらも充実した毎日を送っています。

1.週間スケジュール

 今学期の取得単位は14、これに英語の授業が週2コマ加わります。
 私は論文を書くことを予定しており、合計17単位を取得すれば卒業可となりますが、来学期は論文に集中したいと考えていること、NY Bar受験に必要な単位も確保したいと考えていることから、今学期はほかの人よりもやや多めに授業をとっています。

2.授業の様子

 今週は、会社法の授業で、ゲストスピーカーとして、エンロン事件の主任検察官であるシーン・ベーコウィッツ氏が登場しました。エンロン事件については既にアメリカでは語りつくされた感があり、話の内容自体に特に目新しい点はありませんでしたが、現場の第一線で動いていた人の言葉は重みがあり、エンロン事件の意味を改めて考えるいい機会となりました。
 また、火曜日には、国際環境法の授業の一環として、建築家のウィリアム・マクドナルド氏の講演を聞く機会に恵まれました。同氏は、環境問題に関するオピニオン・リーダーとしてアメリカでは非常に有名な人物とのこと、会場は溢れんばかりの人でした(実際私は第一会場に入場することができず、第二会場で床に座って中継の映像を見る羽目になりました)。講演はサステナビリティに関する新しい考え方を紹介するというもので、非常に興味深い内容でした。
 ナッシュビルは、東や西の大都市からは離れた場所にあるため、授業のゲストスピーカーやアカデミックカンファレンスの類については、正直全く期待していなかったのですが、想像以上に充実しています。バンダービルトはロースクールのランキングでは15-18位に位置する学校で、いわゆる「トップ校」ではないのですが、南部では1、2を争う学校ゆえ、こういう地理的条件が逆に有利に働いているようです。

3.学校外活動

 学期がはじまってからは、予習復習に追われる毎日で、残念ながら休みの日に遠出をする余裕はない状況です。そんな私にとって唯一の息抜きは、やはりショッピングでしょうか。学校から車で10分ほどのところにあるグリーンヒルズモールには、ティファニーからアバクロ、チーズケーキファクトリーまで、購買心をくすぐるウットリ系のお店が色々あります。また、郊外に30分ほど走ったところにあるプレミアムアウトレット・オブ・レバノンには、コーチ、アン・テイラー、ギャップ、ナインウエストなどの店舗があり、手ごろな値段で質の良い品物を手に入れることができます。アメリカの地方都市のアウトレットは日本のそれとは比べられないほど値段が安く、重宝しています。
 
ナッシュビルは南部の地方都市ゆえ、大都市ほど娯楽は充実していませんが、少し足を延ばすと、アメリカらしさを堪能できる観光スポットが結構あります。最近訪れたなかで一番気に入ったのは、メンフィス(車で片道約2.5時間)でしょうか。昼間はグレースランド(エルビス・プレスリーの自宅)や公民権博物館を見学し、夜はバーでビールを飲みながら、ブルースに耳を傾けました。とてもすばらしいライブ演奏で、アメリカに来てはじめて、「私は今、アメリカの空気を吸っているんだなあ」としみじみ思いました。メンフィスはナッシュビルとはまた違った魅力があり、とても気に入ったので、機会をみつけて再訪したいと思っています。
(写真右:エルビス・プレスリーの墓。グレースランドにて。)

4.その他

 私にとってバンダービルトは、2箇所目の留学先となります。7月まで在籍していた西海岸の某州立大学(以下「B」とします。)とは、何もかもが異なり、同じアメリカでもここまで違うのかと正直とても驚きました。どこがどのように違うのか、簡単に述べてみたいと思います。
 まずBでは、学生の大半はジーンズ愛用、教授陣も同様のスタイルを好む人が多かったのですが、バンダービルトの場合、学生のジーンズ着用率は3-4割程度、教授陣はもちろんのこと、スタッフがジーンズを履いているのも、見たことがありません。
 構内の治安が良いことにも驚きました。Bにいたときは、図書館の席にパソコンを放置して席を立つということは考えられませんでしたが(かなりの確率で盗難に遭います!)、ここでは、パソコンや書籍を置いたまま席を離れる人がかなりの頻度で見られます。
 さらに、授業風景もかなり異なります。Bでは、ランチやお菓子を食べながら授業を受けるというのはよくある風景でしたが、バンダービルトでは授業中に物を食べている人を見たことがありません。また、Bでは、先生が質問をすると、待ってましたという感じで手をあげる人が多かったのに対し、バンダービルトでは、周囲を見回し、ほかの人が手をあげているかどうか確認し、遠慮がちに手をあげる人が多いように思います。
 ほかにも色々違いはあるのですが、全体的に見てみると、不思議なことに、西海岸にあるBよりも、Deep southにあるバンダービルトの方が、どことなく日本的なことに気づかされます。どちらが合うかは人によって異なると思いますが、私の場合は、バンダービルトの方が落ち着く感じがします。

 さて次週は、昨年度LL.M.に在籍されていた我らが親分Oさんが、2年目の生活について語ってくれる予定です。どうぞお楽しみに!

Mayのプロフィール・受験体験記はこちらです
http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/2006-08-21-5


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七週目 Oの二年目家族生活 [週替わり日記(2006-2007)]

 昨年、LLMに在籍していたOです。
 今回の週替わり日記では、ナッシュビル近郊の観光地について紹介します。
我が家のお気に入りの一つは、ナッシュビルから東に向かって車で約2時間ほどの所にあるChattanooga(チャタヌーガ)という町です。昔は炭鉱で栄えた町ですが、今ではその面影はほとんどなく、観光だけで成り立っているような町です。子供がいる家庭には、特にお勧めです。
 この町で一番の売り物は、何と言っても水族館。「何だ水族館か。」と言わないでください。一応、テネシー州最大の水族館です。全米一(世界一?)の水族館は、お隣ジョージアの水族館だそうです。この水族館の珍しいところは、淡水魚の展示が多いことです。隣に流れるテネシー川だけでなく、世界中の淡水魚が集まっています。魚マニアにはたまりませんな!他にも、この水族館付属のIMAXシアターなども十分に楽しむことができます。

水族館の魚達(海水魚?)


テネシー川の観光船(動くのか?)


 我が家の子供たちのお気に入りは、子供向け科学館、Creative Discovery Museumです。この科学館の特徴は、「子供たち!とにかく触って、やってみよう。」という感じで、子供達が、いろいろな道具や展示物を使って遊ぶことができます。子供達は2時間以上遊んでいても遊び足りないというくらい、かなりハマってしまいます。先月は、日本を紹介する特別企画がありました。日本の家屋や学校の様子が、偏見も全くなく、かなり正確に展示されていました。米国南部の町でこんな展示に出くわしたので、とても嬉しくなりました。日産の本部も移転してきたし、テネシーは親日?

科学館の入り口

発掘現場


Incline Railway
Chattanooga Choo Choo(古ぼけた感じがいい。)"

おわり。


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番外編その1 MBA2年生Kの場合 [週替わり日記(2006-2007)]

Law Schoolのお隣、Vanderbilt大学のビジネススクールであるOwen Graduate School of Management (以下Owen)のMBAプログラム2年次在学中のKと申します。

今回Owen在学中の私が伝統あるバンダービルトロースクール日本人会より原稿執筆を依頼されたのは、Law SchoolとOwenとの合同授業を履修しているからに他なりません。私の体験談を通してLaw SchoolあるいはVanderbiltで学ぶ魅力を皆様にお伝え出来れば幸いです。

1.オープンなカリキュラム
Law SchoolとOwenの合同授業は相当数に及びます。代表的な授業としては、Corporate Finance, Corporate Restructuring under Chapter 11, M&A, Equity Markets, Real Estate Financeといったところでしょうか。全てのOwenで履修出来る科目は全Vandy学生に対してオープンになっていますが、卒業単位として認定され得るか否かは講義担当教授と在籍schoolのacademic programとの交渉によるのが通常です。この点、Law SchoolとOwenの合同授業は既に公式に単位認定科目に指定されています。承知する限り、Law School学生に人気があるOwenの講義はFinanceとAccounting科目のようです。実際、幾つかの両スクールの合同授業はFinanceあるいはAccounting科目がpre-requisiteになっています。


(Law Schoolから徒歩30秒のOwen校舎)

2.授業の一例:M&A
現在私が履修しているのがLaw schoolとOwenの合同授業であるM&Aのクラスです。この科目はOwenではFinance creditに充当されます。授業の構成は、前半3ヶ月がM&AにおけるFinance分野中心、後半3ヶ月がLaw分野中心になっています。講義は常時Law schoolとOwenそれぞれから一人ずつ、計2人の教授によって進められます。このOwenとの合同授業であるM&Aと他のLaw School単独授業との大きな違いは、チーム単位で毎週の課題に取り組む点です。Owenではノーマルなスタイルなのですが、毎週教授から課題ケースと問題が与えられ、チーム単位でレポートを提出する必要があります。チームはLaw SchoolとOwenの学生の混合であることがmustで、レポート作成にあたっては、Finance論点はOwen学生が、Law論点にあたってはLaw School学生が貢献していくことが求められます。また任意のケース1回について、各グループは授業中にプレゼンテーションを行うことも義務付けられています。合同授業の醍醐味は、こうしたグループワークを通して、違うフィールドで学ぶ学生がお互いのスキルを補完・向上し合うことにあると私は思っています。

私の稚拙な文章だけではこの授業の魅力を充分に伝えることが出来るか不安だったため、チームメートであるLaw School 在学(JD,3L)のアメリカ人Rさんに、Owenとの合同授業についてのコメントを頂きました。Rさんは間違い無く私がVanderbiltで出会った最も優秀なアメリカ人の一人です。法律分野は言うまでも無くFinanceセンスも抜群で、当初のgive & takeの関係が今ではすっかりあやしいぐらいです。既にRさんと一緒にこなしたケースレポートの回数は10回を越えており、プレゼンテーションの準備に2人で数時間の議論を交わしたこともあります。お陰で今ではプライベートでも会う程の仲です。前置きが長くなりましたが、以下、Rさんのコメントです。

Benefits of studying with Owen students; In my opinion, law is a part of business (and not the other way around) and as such, it is critical that law students work with business students to learn how to work together to come up with solutions that both allow business to grow and comply with the law. Personally, working with business students has really helped me to understand critical aspects of management that I can use to be a better lawyer.

Benefits of studying law and business; As a former manager at a Fortune 1000 company, I think the most effective lawyers are ones who know how the law works within the context of the business. Specifically, at Vanderbilt I have taken classes in finance and accounting that provide me with a better understanding of how to write contracts that include finance and accounting numbers.

Taking joint classes will be better for my career; For me personally, I am going to go into venture capital. In this area of business, the lawyers have to be as good at law as they are with finance. The only lawyers who can succeed in this area are ones who are very adept with financial models. As such, my finance and accounting classes will be invaluable to me. Additionally, working with the business students really helped me to become much better at finance and accounting. I have learned as much from my finance classes as I have from the Owen students.

I recommend Japanese students take joint classes; I think both Japanese students and American students benefit from having a diverse group to work out problems. When I was a consultant, I often had to work with people from all over the world. And people from different countries or continents bring different perspectives to the problems we are asked to solve. My group had students from both the United States and Asia (Japan and Taiwan). Our group consistently received top grades on our assignments because of our ability to bring different perspectives to a problem. Without the diverse people in our group we would never have gotten such high grades. And plus, it is a lot of fun to work with people from different countries. I know other law students have also said how much they enjoy working with students from other countries.


(チームミーティングの一場面。講義終了後の夕刻や週末には見慣れた光景です)

3.終わりに
ここまで硬いことばかりを書きましたが、Law Schoolの隠れた?魅力は何と言っても「若さ」です。Owenはある程度の職務経験のある学生が集まるため、平均年齢がかなり違うように感じられます。更に、女性学生の多さはOwenの比ではなく、「華やかさ」も大きな魅力です。Law Schoolの校舎で可愛い学生を目撃する度に、その恵まれた学習環境を羨望の眼差しで見る私(妻子あり)がいます。…というのは冗談にせよ、優秀なLaw School学生と一緒に学ぶ機会を得たことは、間違いなく私の留学生活の財産の一つです。スクールの垣根を越えた”opportunity of studying”はここVanderbiltに確実に存在します。


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番外編その2 配偶者Eの場合 [週替わり日記(2006-2007)]

 LLM の留学生の妻のEです。私のナッシュビルでの日常をご紹介します。
 一足先にこちらで新生活を立ち上げた夫の元へ、2歳の息子と渡航して参りましたのが2006年8月中旬ですので、既に5ヶ月の滞在になります。
当初は全く身よりもない未知の世界に、幼い子供を連れて飛び込むことがかなり不安でしたが、今はナッシュビルの素晴らしい生活環境と周りの方々の温かいサポートにより快適な毎日を送っています。
 
 おおよそですが、私の1週間のスケジュールを紹介します。
 毎週火曜と木曜の9時~15時まで息子を保育園に通わせています。こちらは自宅から車で5分ほどの教会付属の保育園です。
クラスは中国人の女の子と息子以外は全てネイティブのお子さんばかりです。
 入園時、息子は日本語しか理解できない状態でしたので、英語しか話さない先生やクラスメイトに馴染めるのかかなり不安でした。
 しかし、最初に先生から「基本的な言葉 "Good Morning" "Lunch" "Thank You" "Don't Cry"等を日本語で何というのかローマ字で書いて欲しい。これを一覧表にしてスタッフで覚えますので 。」との話があった時に、ここなら安心して預けられると確信しました。
 かんじんの息子ですが、最初の2日程はかなり泣いてましたが、今では帰りたくないという日もあるくらい楽しく通っています。子供の適応力には本当に目を見張るものがあります。
 まだ日本語もろくにしゃべれない息子ですが、英単語がいつ口をついて出てくるかと密かに期待している今日この頃です。


 一方、私は息子を預けている間、保育園と同じ教会内のEnglish Class に参加しています。週2日それぞれ3時間の授業ですが、Public School なので授業料は無料です。
 こちらでは、英語の勉強だけではなく、生活に密着した話題、例えば「買い物時の値札の見方」とか「小切手の書き方」までレクチャーしてくれます。
 また、季節ごとの行事も盛り沢山で、ハロウィーンにJack-o'-lantern を作ったり、サンクスギビングにはそれぞれ自国の手料理を持ち寄ってパーティーをしたり、クリスマスにはアメリカの一般家庭での飾り付けの紹介をしてくれたりと、至れりつくせりです。
 息子に比べ英語になかなか馴染めない私ですが、普通に生活しているだけでは現地の文化や習慣になかなか触れられないので、本当に貴重な場です。
 授業が終わって息子を迎えに行くまでの3時間ほどは、買い物をしたり、友だちと食事をしたり。唯一自分のために使える貴重な時間ですが、毎回あっという間に過ぎてしまいます。
 
 また、更に週にもう1日英語を勉強する機会があります。
 毎週水曜日に2時間ほど、夫の留学生仲間の韓国人女性に自宅で日本語を教えています。しかし彼女との共通言語は英語なので、日本語をお教えしつつ私の英語の勉強にもなるのです。
 勉強の合間にはお互いの趣味の話題で盛り上がったり、私のお気に入りの韓流スターの実情を教えてもらったり、息子と遊んでもらったり、お互いにいい気分転換にもなっています。
 それ以外の日は近所に大きな公園がいくつかありますので、息子を連れ出しています。そこでも地元の親子が沢山来ていますので、おもちゃの貸し借りをしたり、親御さんと立ち話をしたり、日本と全く同じような光景が見られます。


 また週末にはたまに、夫の留学生仲間に和食をごちそうしたり、逆に招待されたりなど、家族ぐるみのおつきあいです。

 生活の内容が大きく変わったことに伴い、英語漬け、外国人漬けの毎日だからこそ、愛国心や自分は日本人なのだという意識が強くなりました。
 ナッシュビルのような日本から遠く離れた地方都市にも、日本人そのものは少ないですが、日本車や日本製の電化製品があふれています。ここまでに至った私たちの先人の努力を誇りに感じます。
 今の環境に慣れるまでには多少の苦労もありましたが、いまではこの貴重な機会を与えてくれた夫にも感謝しています。
 この体験は私達夫婦はもちろん幼い息子にも、今後の人生において間違いなく大きな影響を与えてくれるのではないかと期待しています。
 こちらでの生活も残り半分になりましたが、育児も英語の勉強も含めて引き続き楽しみたいと思っています。


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八週目 Mayの場合 その2 [週替わり日記(2006-2007)]

 1月8日からいよいよ春学期がはじまりました。Vanderbiltでの学生生活も折り返し地点を過ぎたことになり、少々複雑な心境です。ここ「週替り日記」では、秋学期同様、週替りにて、私たちの日常生活を紹介していきたいと思います。

1.週間スケジュール


 月曜から金曜まで毎日2-3コマの授業が入っていた秋学期に比べると、今期はかなり余裕があるように見えますが、短期集中のShort courseを3つ受講していること(土日や平日の夜間に授業が入ります)、今学期はLLM論文を書く予定であることから、実際には秋学期同様、あわただしい毎日です。

2.授業の様子

 今期の受講科目のうち、月曜日の午後にあるLaw and Businessセミナーは、正規に受講すると単位取得の上限をオーバーしてしまうため、Audit(聴講)という形で授業に参加させてもらっています。Auditの場合、試験やペーパーの提出は免除されるのですが、授業では他の学生同様容赦なく当てられますので、予習に時間を割かなければならない点は、正規の受講と変わりません。また、このセミナーは、ファイナンスや統計学、経済学などの基礎知識があることが前提とされているのですが、私はこれらの知識がほとんどないため、四苦八苦しています。現在私は妊娠7か月であるため、大きなおなかを武器に、「ほらほら私、妊婦なの~。だから毎日体がだるくって、勉強たいへ~ん!!」と教授に必死でアピールしているんですが、あまり効きません。今週のセミナーでは二度当てられ、一度目は何とか乗り切ったものの、二度目は撃沈しました。数学が苦手だったため、法学部へ進学することを選び、弁護士になったのに、まさかこんなところでΣだとかF(x)だとかと格闘する羽目になるとは!人生何が起こるか分かりません。

3.学校外生活
  
 現在は、オフの時間のかなりの部分を、出産準備のために割いています。語学の壁がある上に、初めての出産で右も左も分からない状況ゆえ、何をするにも時間がかかり、大変です。アメリカは事務処理にまつわるトラブルが本当に多いのですが、今回も保険のことやら病院のことやらで、色々な小トラブルに巻き込まれました。最初のころは、英語の練習と自分に言い聞かせ、自ら電話をかけて対応していましたが、最近はクレーム処理の電話はもっぱら夫にまかせ、私は後ろで日本語で野次を飛ばす役に徹しています。そのため外でも日本語で野次る癖がついてしまいました。F-wordを連発するよりはマシかなと自分では思っていますが、このまま日本に戻ると変人扱いされることは確実ですので、そろそろお上品な本来の私に戻らなくてはと思っています。
 
 出産予定日は、5月6日です。春学期の期末試験終了日が5月4日、卒業式が同11日なので、どうなることかと不安に思っていましたが、学校に相談したところ、「試験の日程調整を含め、全面的に協力する」とのことで、安心しました。LLMプログラムのアソシエイト・ディレクターであるシンシアに至っては、「Our first baby!」と喜んでくれました。(注:念のため申し上げておきますが、赤ちゃんの父親は、シンシアではありません。LL.M.の学生が在学中に出産するのは、当校では初めてのことでして、そういう意味で「Our first baby」なのであります。)

 なお、この冬休みは、当初は家でのんびり過ごす予定でしたが、子供が生まれると旅行もままならないので、急遽予定を変更し、メキシコのカンクンに行ってきました。日本からは十数時間かかるカンクンですが、ナッシュビルからは直行便があり、わずか2.5hのフライトで到着です。時差もありません。自宅からナッシュビル空港も、車で15分の近さですので、朝の6時に家を出て、10時半にはホテルのビーチに寝転がっていました。ナッシュビルは、東海岸の大都市のみならず、カリブ海リゾートやフロリダにも近いので、思い立ったときに気軽に旅に出ることができ、なかなか便利です。


(写真:カリブ海は本当に美しい色をしていて、見ているだけで癒されました!)

 さて次週は、わが校の誇るカリスマ・シェフ(?)、Hideさんの登場です。


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九週目 Hideの場合 その2 [週替わり日記(2006-2007)]

 ナッシュビルでは一足早く冬が過ぎ去ろうとしています。最近では最高気温が15度ほどの日もあります。今年は暖冬ということもあり、日中の最高気温が氷点下になる日はほとんどありませんでした。雪もちらっと降ったのを見かけましたが、積もることもありませんでした。さすが南部だけあって、アメリカのなかでも非常に過ごしやすい地域だと言えると思います。

1.週間スケジュール


 今学期は4科目(10単位)を履修しています。Mayさん同様、ショートコースを2科目履修しているため、見た目より忙しい日々を送っています。

2.授業の様子

 証券取引法は、Mayさん、Yさんを含む計7名のLL.M.生が履修しています。担当のトーマス教授はクリアな英語でゆっくり話そう心がけてくれ、また、留学生からの(下手な英語での)質問にも嫌な顔をせずに対応くださいます(教授はLL.M.プログラムの総括責任者でもあります)。

 私は証券取引法にかかる実務経験があるので、何とか授業で活躍して、教授に名前を覚えてもらおうと取り組んでいます。特に、オフィスアワー(授業時間外に教授が生徒からの質問をオンサイトで受け付ける時間)では、実務家の視点から、日米間の相違点や、日本での慣行等を紹介しています。先日、教授から「君はいつも日本の証券界のことを色々話してくれて大変有益だ。ありがとう。」というお言葉をいただきました。リップサービスとは思いますが、うれしいものです。今後も頑張って話し続けようと、心に決めました。

 また、卒業後にNY Bar Examを受験する予定なので、Barの主要科目である不法行為法を履修しています。不法行為法はJD1年生の必修科目になっており、約100名のJD(アメリカ人)に混じって講義を受けています。LL.M.からはポーランド人、中国人と私の3名だけが履修しています。完全なるソクラテスメソッドで、教授は生徒の名前の入ったフラッシュカード(単語帳の大きいやつ)を片手にバンバン指名していきます。この何とも言えない緊張感がたまりません。

 授業は、ケースブック類似の架空話について、指名された人が原告被告それぞれの立場の弁護士としてどのような主張をするかという議論が中心です。私は1週目に指名されましたが、十分な主張が出来るまで許してくれませんでした。しどろもどろになりながらも何とか切り抜けられたときの達成感はたまりません。

3.学校外生活

 私が渡米前にもっとも心配していたのは食事面でした。ナッシュビルには日本食レストランがいくつかあるのですが、費用対効果の問題もあり、なかなか満足できないのが現実です。日本食に強いこだわりのある私は、何とかして日本の味を再現しようと工夫しています。

1)新鮮な刺身を食べたい!
 
 ナッシュビルの日本食材店では、マグロ(赤身)とサーモンしか取り扱いがありません。スーパーの魚は、火を通すことが前提になっているので、とても生で食べられる鮮度ではありません。日本食レストランで刺身を食べられますが、非常に高くてとても手が出ません。

 八方ふさがりの状況下でいろいろ調べた結果、シカゴの天助マーケットがメールオーダーを受け付けてくれることがわかりました。水曜日にEメールで注文を出すと、木曜の夕方に天助が宅急便(Fedex)で出荷、金曜の朝9時にはアパートに到着しています。発泡スチロールの箱に保冷材が入ってきっちり梱包されてきますので、鮮度抜群!冷凍ものも完全に凍った状態で届きました。ネタは、中トロ、赤身、カンパチ、真鯛、しめ鯖、いくら、ウニ等。日本のスーパーで買うものよりも鮮度が高く、非常に美味しかったです。

2) おでんが食べたい!

 冬の風物詩といえば「鍋。」寒い冬には鍋物が食べたくなるものです。韓国レストランでチゲ鍋もいいのですが、やはり日本の味が恋しくなります。車で20分ほどの隣町の日本食材店はおでん種の宝庫。厚揚げ、大根、ちくわ、ゴボウ天、さつま揚げ、きんちゃく、はんぺん、ちくわぶ、何でも揃います。じゃがいも、卵を近くのスーパーで調達し、ダシを取れは出来上がり!ちなみにこの日本食材店では、牛肉や豚肉(ともにロース、バラ)の薄切り肉も手に入るので、すきやき、しゃぶしゃぶ、お好み焼きも出来ますね。

3) やっぱり魚が食べたい!

 近所のスーパーの魚売り場には、定番のサーモン、マグロ、ナマズ(!)に加え、不定期に珍しい魚が入荷されます。今週はアンコウでした。アジア食材店で春菊、白菜、しいたけ、エノキ等の野菜や豆腐等を手に入れ、アンコウ鍋にしました。お味は日本のアンコウと同じでした。そのほか、カレイや鯛などもよくお目にかかります。カレイは煮付け、鯛は鯛めしにしましたが、どちらもとても美味しかったです。ちなみにこちらで魚を買うときは、1パウンド○ドルといった形で量り売りになります。初めは少し違和感がありました。

 このように、ナッシュビルでも少し手間をかければ、日本の味を再現することが十分可能です。料理全般で気になる方は、お気軽にお問い合わせください。

 さて次週は、LL.M.イチの幸せ者、T.T.さんの登場です。どうぞお楽しみに。


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十週目 T.T.の場合 その2 [週替わり日記(2006-2007)]

 みなさんこんにちは。「LL.M.イチの幸せ者」と紹介いただいたT.T.です。なぜ「幸せ」なのかというと・・・私は、昨年の秋に独身生活にピリオドをうち、現在、妻と新婚ほやほやな生活を送っているからです。

 最近、結婚生活を送るようになって初めて、料理がナシュビルでの生活の幅を格段に広げるということに気付かされました。私はほとんど料理をしないため、先学期、外食と冷凍食品を中心とした食生活を送っていましたが、今は妻の料理に舌鼓を打っています。妻と食材の買い物に行き大変に驚かされることは、肉の価格の安さです。これまで、調理を必要とする肉には目もくれなかったので気付かなかったのですが、牛肉、豚肉、鶏肉のどれも、キロ単位で買っても10ドルもしません。元来魚が好きな私ですが、これだけ肉が安いとなると、これからは肉中心のアメリカンな生活にどっぷりと浸かることになりそうです。

1.週間スケジュール

 私は、今学期は3科目と2つのショートコース(計11単位)を履修しています。相変わらず日々予習に追われていますが、先学期に比べて履修単位が2単位減っただけで、少し生活に余裕がでてきたと感じています。

2.授業の様子

(1) 刑事訴訟法(その2)

 この授業は、先学期に履修した刑事訴訟法(その1)の続きとして位置づけられるものです。今学期は、被疑者の逮捕後の手続き(起訴、裁判等)を学んでいます。担当のキング教授は、学生をいくつかのグループに分け、それぞれのグループの学生が確実に当てられる日を前もって決めています。突然当てられるよりも親切といえば親切なのですが、指定された日には、何の言い訳も許してくれません。当然、LL.M.の学生も容赦なく当てられるため、私も普段より予習に熱が入ります、先日、当てられた問いに対して、(自分としては)かなり的確な議論をすることができ、大変な達成感を得ることができました。教授の質問を正確に聞き取ることすらままならなかった先学期に比べて、自分の英語力が伸びていることを実感することができた瞬間でした。

(2) ショートコースとTake Home Exam

 1月20日から25日にかけてショートコース(国際公法)を履修しました。シュートコースを履修すると、1週間あるいは2週間の短期集中の授業で1単位を獲得することができます。今回の国際公法のシュートコースでは、5日間の授業で1単位獲得できるため、私は当初「お得感」を感じていましたが、実際に履修してみてそれが間違いであることにすぐに気付かされました。土日にそれぞれ3時間、平日の夜にそれぞれ2時間の授業が行われたため、この週はとにかく必死でした。

 さらに、ショートコースの最後には、Take Home Examが課されます。これは、あらかじめ決められた期間内(今回は1週間)のうち好きな時に試験問題を受け取りに行き、そこから24時間以内に答案を作成して提出するという形式の試験です。答案の作成に当たっては、インターネットの活用等「他人の力を借りること」が禁じられますが、教材や自分のノート等を自由に活用することが許されます。今回は、字数制限2500単語の論述試験でした。試験の問題文には、「通常、3時間程度で終わらせることが望まれる。」というような指示が書かれていましたが、私は、3時間どころか半日以上かかってようやく完成させることができました。試験に24時間も拘束されるというのは精神的には大変な負担となりますが、逆に言えば、24時間も使えるわけです。今回、私は、時間をかけたかいあって、満足のいく答案を書くことができた気がしています。そういった意味では、Take Home Examというのもよい制度であると言えるかもしれません。

3.学校外生活(食生活)

 学校外の生活について、冒頭でも触れましたが、食生活について少し触れておきたいと思います。私は、和食と日本酒をこよなく愛しています。しかし、ナシュビルでは、東京と同じ水準の和食を提供してくれる日本食レストランが見つかりません。また、お酒については、ナシュビルでも日本酒を売っている酒屋がありますが(今のところただ1軒だけですが、まともな日本酒を売っている酒屋を発見しました。そのときの感動は忘れられません。)、種類もごく限られおり、また大変割高であるのが現状です。

 和食(特に魚や刺身)が食べたい、日本酒を飲みたい人間にとっての1つの解決法は、別の大都市まで買い出しに行くということだと思います。ナシュビルから最も近い大都市は、お隣ジョージア州アトランタです。南部有数の大都市アトランタには、ナシュビルに住む日本人が泣いて喜ぶ(少なくとも私はそうです。)商品が豊富に置いてある日本食材店があります。

(1) アトランタまでの道のり

 ナシュビルからアトランタまで約250マイル(約400キロメートル)です。東京から滋賀まで行けるくらいの距離でしょうか。先日、この道のりを日帰りで往復してみました。日本でこの距離を一日で往復することはあまり考えられませんが、アメリカでは、高速道路が無料であること、最高速度制限が70マイル(約112キロメートル)であること、都市部の一部を除いて渋滞がないことから快適なドライブ満喫することができます。片道4時間弱の道のりです。

(2) アトランタで買えるもの

 アトランタの日本食材店には、ナシュビルでは買うことができないものがたくさんあります。今回は、まぐろ、白身魚の刺身、かつおたたき(冷凍)等の生もの、調味料、雑貨、お菓子等のほかに、日本酒を購入してきました。

 このように、和食と日本酒をこよなく愛する私もナシュビルでの生活を満喫できています。また、せっかく恵まれた環境にあるので、これからもいろいろな場所にドライブしに行ってみたいと思っています。

 さて次週は、未来の大教授、Kさんの登場です。どうぞお楽しみに。


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十一週目 Kの場合 その2 [週替わり日記(2006-2007)]

 こんにちは、2回目の登場となるKです。前回9月上旬に日記を書いてから、早いもので半年近くが経ちました。私の生活パターンは前回からあまり変化していませんが、友人たちのおかげで楽しい日々を送っています。

1.週間スケジュール

2.授業の様子

 今学期は、卒業要件に関わる授業が2科目だけなので、前期の5科目に比べてだいぶ楽になりました。反トラスト法も環境法も興味深い内容です。教授陣は指導熱心で、授業後に「授業で分からなかったところはないかな?」とLL.M学生を気づかってくださるなど(環境法担当のVandenberg先生)、とても親切です。その反面、たしかに教授陣は早口で話されることも多く、いまだに聞き取りに苦労しているのも事実です。

 今回は、そんな私をサポートしてくれる授業、LL.M. Englishについてご紹介しましょう。これは、その名のとおりLL.M.学生用の授業で、講師はVandyのELC(English Language Center)から派遣されています。講師陣は、英語教育のプロといってよいでしょう。講師や授業内容は変わりますが、前後期を通じて授業が用意されています。なお、卒業要件とは無関係なので、他の授業で余裕がない人や英会話が堪能な人は、出席していません。

 後期授業を担当するSusan先生は、授業の進め方につき私たちの要望を聞いた上で、「アメリカ社会に適応するためにその場に適した会話表現があることを理解しよう!」というテーマ設定をされました。授業では、ドキュメンタリーからホームドラマまで、様々な教材を用います。ドキュメンタリー番組では、アメリカ国内でも地域・思想・性別・年代・民族性により、英語の発音・アクセント・表現まで大きく異なることが紹介されていました。私は正確な表現や発音が分からないときにどうしても口をつぐみがちですが、これを観たときはもう少し気楽に考えてみようと思いました。前期担当の先生からも「発音もイントネーションもあなたのアイデンティティーの一部だと思って、自由に堂々と話していいのよ」と言われたことが印象に残っています。

 この授業で最も楽しいのは、人気コメディードラマや最新の法廷ドラマを観て、みんなで内容を分析することです。そこでは、何でもない表現が場面によって皮肉や失礼な表現と化したり、また逆に、場にそぐわない形式張った表現が滑稽に映ったりすることを学びました。みんなで楽しみつつ、スラング・日常表現・法律用語を学ぶことができるのも、うれしいかぎりです。ちなみに、英語の学習方法としては、30-40分程度のドラマを繰り返し観るほうが、長い映画をたくさん観るよりも効果的だそうです。そして、英語の字幕を表示するのは3回目以降がよいそうですよ。どうぞお試しください!

3.学校外生活

 私は車のない生活を送っていますが、不便は全く感じていません。どこへ行くにも友人たちが連れて行ってくれるからです。少し前になりますが、私も、Mayさん(6週目)が紹介されていたメンフィスに行ってきました。あいにくの曇り空とはいえ、とうとうと流れるミシシッピ川、小雨模様のBeale通り、行政法の授業で学ぶ超有名事件の舞台となったOverton Park、どれもこれもよい思い出となりました。メンフィスは、古いレンガ造りの建物が立ち並び、アメリカの歴史を感じさせる街です。


 週末は、近所の友人たちと過ごすのが習慣になっています。食事に買い物、それから映画ファンが多いため、毎週のように映画を観に行っています。日本に比べると割安で(学生割引で$7.5!)気軽に楽しめるのがうれしいですね。話題作をいろいろと観たおかげで、主要映画賞の受賞者や候補者について関心が高まり、「たしかによかった」「納得できない」などと好き勝手なことを言っては、ワイワイ騒いでいます。またDVDの貸し借りも盛んで、先日「ゴッドファーザー」が回ってきた際には、その中の台詞をもじってふざけあっていました。何か頼みごとをする際、I’m making an offer that you can’t refuse.(俺は今、あんたが断ることのできない申し入れをしているんだ)などといった調子です。

 今週は、私の部屋の大家さん(80歳男性)とVandyバスケットボールチームの応援にも行きました。今年のチームはけっこう強く、誘っていただいた試合は「プレーオフに進む上で重要なゲーム」とのこと。大家さんはとっても熱いVandyファンです。試合が始まると、”Go Vandy! Go!”とシャウトしていらしたので、こちらも熱くなり「わぁー」「うぉー」などと一生懸命に応援しました。ハラハラドキドキの試合展開となりましたが、最終的には10点差をつけてVandyが勝ちました。「K、今度はベースボール・ゲームだな(ニヤリ)!」本当に素敵な大家さんです。

 さて次回は、私たちLL.M.学生のボス、Yさんが再び登場します。ぜひぜひご覧ください… I’m making an offer that you can’t refuse(笑)!


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十二週目 Yの場合 その2 [週替わり日記(2006-2007)]

 こんにちは、Yです。こちらもそろそろ春のようでぽかぽかした日が続いています。アメリカ人は寒さには強いようで、もう半袖で町中を歩いている人も多くいて驚かされます。

1.週間スケジュール

2.授業の様子

 今学期が最後になるので,仕事との関連を意識して実務的な科目を選択しました。その中でも不動産ファイナンスはもっとも好きな科目の一つです。不動産ローン(note) 及びモーゲージの設定・移転,モーゲージの実行等の諸問題から証券化まで幅広く法律問題を扱います。勉強していて驚くのは,アメリカには実に多くの判例が存在することです。日本でも似たような仕事をしていたのですが,日本では考えても見なかった論点にまで多数の判例があるので,契約書のドラフティングには非常に参考になります。

 また,アメリカの不動産法の多くは州法に規定されており、州毎に多様な法制度が存在します。例えば、モーゲージをどう捉えるかについて,日本の譲渡担保の所有権的構成と担保権的構成の議論と同様,所有権的に捉える州と担保権的に捉える州とその中間の州とがあります。もちろんそうした根本的な違いによって出てくる結論も当然変わってくることもあります。そこで,教授も、学生が将来どの州のlawyerになったとしても対応できるよう、「所有権的構成ならどうか」「担保権的構成ならどうか」という風に常にダイナミックに考えさせるような質問をしてきます。また上記の例以外でも、州によって結論が異なることはままあるので、教授は特定の論点について必ず学生を両方の立場に分けて議論させます。アメリカならではの教授方法だと思います。

 授業が終わった後、毎回のように質問にいっていたら教授に顔を覚えて頂けたようで、時々、「この点、日本法ではどうなっているんだ」といった質問を逆にしてくれるようになりました。こうした議論をするのもLL.Mコースの醍醐味のひとつですね。

3.学校外生活

 せっかくアメリカに来た以上、Nativeのアメリカ人と交流したい!ということはだれでも思うことで、私もいくつかのチャンネルを利用してきました。もちろん、Vanderbiltの場合、Legal Writing、Legal English以外はJDとの混合のクラスになりますので,クラスでのJD学生との交流はその人次第ということになります。授業以外では、私は(1)"APALSA"というアジア学生協会のような組織のイベントに参加する、(2)毎週木曜日,夜10時過ぎくらいから"Bar Review"という名のLaw School 有志による飲み会に参加する、(3)ISSS(国際部)が"First Friend"というNativeの友人を紹介するシステムを利用する,(4)バンダービルト大学の日本語を勉強している学生とConversation Partnerとなる、(5)図書館で隣に座っている人に声を掛ける(!)等の手段を利用してきました。これ以外にもサークルに入ったり,ISSSのイベントに参加すればもっと輪が広がると思います。

 先週の土曜日は、(3)の友人, HideさんとLL.M韓国人と大学内にあるブレアー音楽学校というところでクラッシックギターのコンサートに行って来ました。First Friendの彼は、ナッシュビルで音楽関係の機材のメーカーで働いていて、音楽を初めとする芸術全般に精通しており、気さくに誘ってくれます。

 またブレアー音楽学校は、音楽の都にあるに相応しく、校舎はロースクールのそれよりも大きく、60のスタジオ、50以上のプラクティス・ルームがある非常に大きな学校です。MBAの日本人学生の中にはこれをまたとない機会としてお子さんを通わせている方もいるくらいです。毎週のように有料無料のコンサートが行われており(ちなみに、上記のクラッシックギター・コンサートは無料でした。)、音楽が好きな方にお薦めのスポットです。



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番外編その3 Mのマスターズ観戦記 [週替わり日記(2006-2007)]

 ご無沙汰しております。J.D.三年生のMです。実は先週、ゴルフのマスターズトーナメントを観戦に行ってまいりました。そこで、今回は少し趣向を変えて、ロースクールの勉強の合間にこんな楽しみもありますよ、という意味で、観戦記を書いてみたいと思います。卒業に必要な残り単位数も少なく、特に今学期は授業を週の前半に固めているため、学期の途中でもロースクールの授業を休むことなくマスターズに行ってくることが可能でした。また、渡米以来のこの三年間弱、出不精と忙しさで、一時帰国とNYCでのインターンシップを除いてはナッシュビルに閉じこもっていたため、ナッシュビルの外に旅行をしに行く絶好の機会となりました。

 マスターズは、ゴルフの4大トーナメントの一つで(他の3つは、全米オープン、全米プロ、全英オープン)、招待資格を満たす名手(マスター)たちしか出場できないことから、「ゴルフの祭典」として人々に最も敬愛されていると言われています。また、他の3つのトーナメントでは毎年開催コースが変更されるのに対し、マスターズは毎年ジョージア州オーガスタにあるオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブで開催されています。

 トーナメントラウンド(木曜~日曜)のチケットは、いわゆる「パトロン」という会員しか購入することができず、「パトロン」になるためのウェイティングリストさえも1972年、2000年の2回募集がかかったのみでした。よって、一般の人がトーナメントを見ようと思ったら、「パトロン」の持っているチケットを個人や市場を通じて買うしかなく、原価175ドルのチケットが数千ドルから時には10000ドル近くまで跳ね上がることもあります。私は幸運にも信頼できる業者を通してチケットを1枚手に入れることができたのですが、やはり相当な価格で、一生に一度の観戦の機会だと思って、思い切って購入しました。ちなみに、練習ラウンド(月曜~水曜)のチケットは一般に抽選で販売されるのですが、こちらはトーナメント開催の半年以上前に既に完売しています。


左が練習ラウンド、右がトーナメントラウンドのチケット

 さて、オーガスタは我がロースクールのあるテネシー州のお隣のジョージア州にあるのですが、隣といっても東海岸寄りで、かつサウスカロライナ州との州境にあるため、ナッシュビルからは車で5時間強かかります。水曜日の昼前にナッシュビルを出発し、オーガスタに到着したのは午後5時過ぎでした。この水曜日のチケットは持っていなかったのですが、私はあえて会場に向かいました。と申しますのも、マスターズは観戦のルールが非常に厳しく、特にトーナメントラウンド期間の写真撮影は一切禁止されているため、私にとってオーガスタを写真に収めるチャンスはこの日しか無かったのです。

 会場に向かうと、既に練習ラウンドや名物のパー3コンテストは終わっており、会場からは次々と観戦を終えた人々が出てきていました。会場の外で人のよさそうなおじさんがいすに座って休憩していたので、だめもとで「今日のチケットを譲ってもらえませんか」と丁重に聞いたところ、「ああもう見終わったから只であげるよ」とのこと。勇んで会場に入ると、イベントは全て終わったにもかかわらず、かなりの数の人がコースを歩いたり、日光浴をしたりしていました。私はテレビでしか見たことの無かったオーガスタの美しさに魅せられながら、18コース全てを歩いて周り、沢山の写真を撮りました。


やってきましたマスターズ


クラブハウス。花壇には、おなじみの黄色のロゴマーク


この日のイベントはすべて終了したので、人もまばら。
トーナメント期間中は5万の観客で埋め尽くされます。


明日のトーナメント開始にそなえて、一斉整備をしています。

 翌木曜日のトーナメント第一ラウンドでは、まず1~9番ホールを片山晋吾・セルジオガルシアの組について回りました。ガルシアはスペインのスーパースターで、ギャラリーを大勢引き連れています。身長は平均的な日本人程度ですが、コンパクトなスイングから強烈なショットを放ちます。3番ホールでガルシアが私のほうに突然ボールを放ってきたのですが、うまくキャッチできず、右隣の男性に奪われてしまいました。しかし、どうやらガルシアは私の左隣にいた美人に向かって投げていたようで、周りのアメリカ人も「あいつはよくこういうことするんだよ」といっていました(もっとも、別のホールでは小さな子供にもあげていました)。

 やや歩きつかれたので、今度は9番ホールのティーグランド近くに折りたたみ椅子(後述ポイント④)を置いて定点観測をすることにしました。9番ホールは観戦用のロープがティーグラウンドすぐ近くに張られているので、目と鼻の先でプロのスイングを見ることができるのです。選手は3人ずつ、10分程度の感覚で次々とやってきます。タイガーウッズのスイングは速すぎて全く見えず、耳をつんざくような破裂音だけが響きました。前年優勝のフィルミケルソンはとにかく体が大きく、丸太のような腕(と腹)から300ヤードを軽く超えるビックショットを放ちました。

 プロをこんなに間近で見るのは初めてでしたが、面白いのは、ミケルソン、オラサバル、ビョーンといったおじさん世代の選手はみなプロなのにお腹が出ていることです(それでもスイングはものすごいのですが)。一方で、タイガー、アダムスコット、ジャスティンローズといった若い世代はみな引き締まったアスリート体系で、全身のバネを使ってボールを思いっきり引っ叩くといった感じです。

 2日目、3日目はドライビングレンジやアプローチ練習場でプロの練習を間近でみたり、コース脇に設置された観戦用のスタンドで次々とやってくる選手のプレーを観察したり、売店でサンドイッチを買って芝生の上で日光浴をしたり、来るべき最終日に備えてのんびりと過ごしました。


13番ホール 通称Azalea(ツツジ)


タイガーが最終日イーグルを出した15番ホール 通称Firethorn(イバラ)


16番ホール 通称Redbud(アメリカハナズオウ)


18番ホール右ドッグレッグ 通称Holly(セイヨウヒイラギ)

 そしていよいよ最終日、わたしの究極の目標は最終18番ホールで優勝パットを間近で見ることでした。18番ホールには観戦用のスタンドが無い代わりに、折りたたみ椅子をグリーンの周りに置いて場所を確保することが許されていました。そしてその場所の争奪戦は夜明け前から始まるのです。最終日の朝、午前6時に起床した私は、この日だけ会場から徒歩圏内に確保したモーテルから、真っ暗な中を歩いて会場に向かいました。気温は0度。セーター・フリース・ウィンドブレーカーを着込んで万全の体制です。もしかして一番乗りか?などと思いながら正門前に午前6時半に到着すると、そこには既に50人近くの人が行列を作っていました。

 午前8時にやっと第一ゲートが開き、荷物検査場までたどり着くことができたものの、私の並んでいた列の検査員がバックの隅々まで念入りにチェックするおじいさんで、後から来た別の列の人たちにどんどんと抜かれてしまいました。他の列の検査員はみなが急いでいる状況をわかっていて簡単な検査だけですぐに通すのですが、私のいた列だけは全く動かず、その検査員は大ブーイングを買っていました(彼は「まあまああせらず、急がせるとなかなか終わらないよ」と皆に呼びかけて追い討ちをかけ、暴動寸前になりました)。

 やっとのことで検査場を抜けたものの、コースに下りた霜のため、コースに入る直前の第二ゲートは一時間後の9時まで開かないとのこと。第二ゲートはさしずめ競馬のスタート地点のように小さなゲートがいくつも並んでいるのですが、検査場で手間取ったため18番ホールに近いゲートには既に多くの人が群がっており、しかたなく一番端のゲートで大外から回り込むような形になりました。9時に一斉にゲートが開き、人々はほとんどダッシュに近い全力のはや歩きで(走るのは禁じられています)18番ホールを目指します。私も大外からかなり挽回したのですが、18番ホールに到着したときには既にグリーンを囲む椅子の列が3列ほどできており、私は4列目になってしまいました。18番グリーンの周囲に置くことのできる椅子は8列程度で、場所を確保できなかった人々はその外側で立ち見になってしまうのです。今度テレビで18番ホールを囲むギャラリーをごらんになったら、「ああ大変な苦労した人たちなんだな」と思ってあげてください。

 その後は、各ホールを回ったり、練習場を見たりしてゆっくりと過ごし、選手が18番ホールに到着する頃に確保した地点に戻りました。18番ホールは打ち上げのパー4になっており、第二打を打ち終えた選手が太陽を背にしてゆっくりと丘を登ってくるのを、スタンディングオベーションで出迎えるのです。どの選手も4日間の激闘を終えようとしている満足感に溢れているのですが、プレーは真剣です。賞金や来年度の出場資格がこのホールの一打にかかっているからです。

 また、18番の脇には、上位選手の各ホールの動きがわかる掲示板が設置されています。タイガーが15番でイーグルを取ったり、優勝したザックジョンソンが2ホール連続でバーディーを取ったりといった情報が次々と入ってきて、観客の興奮も頂点に達します。タイガーを3打リードしていたジョンソンは17番でボギーをたたき、18番の第二打目もグリーンをはずしてしまいました。しかし、初出場ながらもジョンソンは堂々として落ち着いており、難しいアプローチを10センチの距離に寄せる神業を見せ、優勝を決定付けました。

 そんなこんなであっという間に終わった興奮の4日間でした。そこで私が得た、マスターズ観戦をより楽しいものにするための7つのポイントをお話したいと思います。

① ホテルの確保: とにかく早めに

 マスターズはチケットの確保も困難ですが、ホテルの確保も並大抵ではありません。マスターズ以外にはほとんど何も無いオーガスタという小さな田舎町に、一日5万とも言われる観客、それに加えて選手や関係者が集まるため、宿泊料金は普段の4倍から5倍になり、そしてそれでもめぼしいホテルはほとんど1年前に埋まってしまいます。そこでオーガスタだけでなく、車で30分ほどのアイケン、1時間ほどのコロンビアといった町に宿泊する人も多くいます。

 私の場合はホテルの予約で出遅れてしまったのですが、直前まで毎日ネットでキャンセルの出るホテルをチェックしていた結果、幸運にも会場から車で15分ほど、隣町のノースオーガスタにあるSleep Innを確保することができました。価格は普段の4倍程度でしたが、建物が新しく中もきれいで、十分満足できる質のホテルでした。また、最終日の前日は、朝早く会場入りするために、会場から徒歩圏内にあるRoadway Innを確保しました。普段は35ドル(今回はその6倍)のモーテルですから質は推して知るべしですが、とりあえず寝るには困りませんでした。

② 渋滞対策: Washington Roadを絶対に避ける。抜け道を使う。

 会場の正門前を走るWashington Roadは、マスターズ開催期間中恐ろしく渋滞します。歩いたほうが早いくらいです。ネットで親切な人が教えてくれたところによると、Augusta Nationalの南側を通るWanton Wayを使い、西側ゲートに面しているBerckman Roadに出るのが一番良いとのこと。その通りにした結果、車を使用した木から土の三日間、ほとんど渋滞にあわずに会場入りすることができました。Berckman Roadをしばらく走ると、道路わきにおじさんが「Parking $10」などといった看板を持って立っています。これらは近所の住民が自分の家の庭や空き地をこの期間だけ駐車場にしているものです。より会場に近い場所だと値段も20ドルに上がりますし、空いている保証もありませんので、10ドルの場所に停めて歩いて会場入り(西側ゲートまで徒歩5分ほど)するのがお勧めです。

③ 防寒対策: 軽くて暖かく、脱ぎ着のしやすいものを

 Augustaの朝晩の気温は0度近くまで下がり、一方日中は日照りも強く30度近くまで上がります。先週は特に米国全体の気温が低く(NYでは雪も降りました)、初日こそ半そでで快適でしたが、三日目四日目はフリースとウィンドブレーカーを重ね着しても震えるような寒さでした。ニット帽、手袋、ホッカイロなども持参すると便利です。ちなみに靴については、相当な距離を歩きますのでスニーカーもしくはスニーカータイプのゴルフシューズ(雨の日は芝生がすべるのでこちらがベター)を履くべきです。サンダルで来ていた女性もいましたが、自殺行為です。

④ 携行品: 折りたたみ椅子と小さなポーチを持参

 コースへの持込については大変厳しいルールが適用されており、カメラ(トーナメント期間)・携帯・30×10×10インチ以上のバックなどの持ち込みは禁止されています。持ち込めるバックは非常に小さく、ウェストポーチ程度です。一方、肘掛のない折りたたみ椅子と双眼鏡については、手で抱えて持ち込むことが可能です。折りたたみ椅子は市販のものでもかまいませんが、売店でマスターズのロゴ入りの椅子を29ドルで売っており、持ち運びがしやすくお土産にもなりますので、これを買うことをお勧めします。椅子は一人一台のみ、場所取りに使うことが許されています。なお、飲食物も一切持ち込むことができないため、会場内の売店で飲み物やサンドイッチを売っています。コカコーラが大スポンサーになっているのですが、会場内で商標を使うことはできず、コーラは「ソフトドリンク」という名称で売られています。


マスターズ特製ミネラルウォーター 1.5ドル

⑤ 観戦: 選手に同行する、定点観測をする、練習を見る、の3パターン

 まずは、好きな選手について18ホール全てを回ってみることをお勧めします。ただ残念ながら、フェアウェイの周囲にはロープが張られており(その外でしか観戦できない)、また人気選手は多くのギャラリーを引き連れているので、必ずしも選手の一挙手一投足はわかりません。そこで、様々な選手のプレーをじっくりと見ることができるのが定点観測です。前述のように、折りたたみ椅子で場所を確保することもできます。また、各所に設置されているスタンドが満席の場合でも、並んで空くのを待つことができます。さらに選手の技術的な点を学びたい場合は練習場がお勧めです。特にアプローチ練習場は奥にあるので観客席も比較的空いており、プロの神業を間近で見ることができます。

⑥ お土産: 2日目までに買う

 3日目の土曜日になると、売店のお土産はだんだん売り切れてきます。最終日にはほぼ空っぽになります。お土産は比較的良心的な値段で、全てロゴが入っています。個人的には、ボール、マーカー、グリーンフォークなどがコンパクトでデザインも良いのでお勧めです。

⑦ やはり最終日は18番ホールで: 体力・気力・運の勝負

 前述のように、18番ホールの観戦場所確保は体力と気力と運を必要とする大変な作業ですが、特に最終日はぜひとも確保されることをお勧めします。感動が違います!

 マスターズのチケット 数千ドル
 ホテル代(4泊) 千ドル以上
 最終日の開門 2時間半待ち
 18番ホールで優勝を決める一打を見られたこと プライスレス


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番外編その4 卒業式(Commencement) [週替わり日記(2006-2007)]

 とうとうこの日がやってきました。5月11日の金曜日、青く澄み切った空の下、Vanderbilt University Law Schoolの卒業式が行われたのです。LL.M.の人たちにとってはあっという間の一年間、J.D.にとっては山あり谷ありの三年間、全ての苦行が報われる瞬間です。誰もが、つらくそれでも楽しかった日々を思い出し、晴れがましい表情をしています。

 米国では一般的に卒業式のことを、GraduationではなくCommencementといいます。Commencementは「始まり」の意味も持ち、ラテン語のCom(一緒に)+Initiare(行く)を語源としています。すなわち、卒業は終わりではなく、これからの新しい人生の始まりである、という意味なのです。われわれ卒業生は、これからDoctor of JurisprudenceもしくはMaster of Lawとして、社会に出て行く、もしくは戻って行くのです。

 まずは朝8時に全員集合して記念撮影。今年の卒業生はJ.D.が224名、LL.M.が19名と、比較的小規模の当校にとっては、過去最大の人数となりました。

 この写真は、ロースクールの正面でとったJ.D.卒業生たちです。卒業生は写真のようにレガリアと呼ばれる特別なガウンと帽子をかぶります。後ろのほうから、「最前列の諸君、足はきちんと閉じないとだめだよ」と野次が飛んできます。実は、入学式の当日も集合写真をとったのですが、そのときは女性が最前列に並んでいたため、足の開き具合でスカートの中が見えそうになってしまった人がいたのです。
 
 ガウンの中は何を着ても良いのですが、たいていの男性はシャツにネクタイをして長ズボン、女性はワンピースやパンツスーツがほとんどです。しかしそこはさすがアメリカで、Tシャツ短パン、はだしにサンダルなどという学生もちらほらいます。彼らは後ほどの式で壇上に上がるときも、そのままの格好で堂々としていました。

 こちらはLL.M.の卒業生の皆さんです。写真撮影の合間なので、みなさんリラックスした表情です。

 9時から学校全体の卒業式があり、その後は学部ごとに分かれて卒業式を行います。10時半からはいよいよロースクールの卒業式が、ロースクールの隣の広場(Alumni Loan)で行われます。スコールが予想されていたので、大きなテントが張り巡らされ、その下に卒業生と家族が座りました。テントの中は蒸し暑く、レガリアを着た学生にとっては蒸し風呂のようです。最初に校長(Dean)と教授のスピーチがありました。「皆さん暑くて大変でしょうから私のスピーチは短くしましょう」という前置きで始まりましたが、われわれには果てしなく続くように感じられました。

 次に、4つの賞の表彰が行われました。一つ目は、学年のトップに与えられるFounders Medal。カナダからの留学生(留学生といっても母国語は英語ですが)で、ローレビューのメンバーでもあり、多数の科目で最優秀賞を受賞してきたK君が受賞しました。それから、最優秀論文賞および最優秀貢献賞の表彰があり、最後はLL.M.として最も優秀な論文を書いた人に与えられるLL.M. Research Prizeが発表され、なんと日本人LL.M.のMayさんが受賞されました。おめでとうございます!ちなみに、他の22の賞は卒業冊子への掲載という形で発表され、わたくしJ.D.三年生のMも、国際法と論文に関する2つの賞をこっそり受賞しました。

 そしてお待ちかね、学生一人一人が壇上に上がって卒業証書を受け取る授与式です。まずLL.M.の皆さんが壇上に上がった後、J.D.の一番手は、M.D.(メディカル・ドクター)とのジョイントディグリーを習得したC君で、驚きの声があちこちで上がりました。J.D.とM.D.はそれぞれ3年と4年かかり、ジョイントしたとしても6年かかる大変な学位で、とても珍しいのです。

 ジョイントディグリー取得者の後には、J.D.単独の取得者がアルファベット順に壇上に呼ばれていきます。勿論拍手はみなしてもらえるのですが、人気者や、大家族の応援があるものに対しては大きな声援が飛び交います。とくにアフリカ系アメリカ人の応援のノリはすさまじく、壇上の学生が恥ずかしがって恐縮しまうほどでした。私はアルファベットの最後の方で、しかも直前にアフリカ系アメリカ人が連続して、会場全体が盛り上がっていました。もし私の番でシーンとなってしまったらどうしようと思っていましたが、幸いに友人の何人かが大声を上げてくれ、気持ちよく証書を受け取ることができました。

 最後はシャンパンとイチゴで乾杯。これでロースクールでの全ての行事が終わり、学生たちはキャンパスを去り、司法試験を受験したり母国に帰ったり、別々の人生を歩んでいくのです。


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