週替わり日記2008秋学期 その7 I.A.の場合 [週替わり日記(2008-2009)] [週替わり日記(2008-2009)]
こんにちは、I.A.です。ナッシュビルの寒さも一段と増して、本格的な冬が近づいている今日この頃です。学期末が近づくにつれて、試験やゼミ論文の準備に追われて忙しくなってきている人が多いようです。ロースクールの雰囲気も、8月の頃とは変って慌ただしくなってきました。私もそろそろ期末試験の勉強を始めるところですが、噂に聞くロースクールの試験が実際にどのようなものなのか気になるところです。
1. 秋学期のスケジュール
2. 授業の様子
まだ紹介されていない、Civil Procedureの授業について書かせていただきます。この授業は、ロースクールの一年生が履修する基礎的な科目のひとつで、アメリカ連邦法上の民事訴訟手続きを学びます。ただし、アメリカの民事訴訟法は範囲が膨大なため、この授業では主に正式事実審理前に問題となる裁判管轄やディスカバリー手続き等に焦点が当てられています。民事訴訟法関連のその他のトピックは、他の授業でカバーされているようです。たとえば、クラス・アクションについてはComplex Litigationという授業で独立して教えられていて、また正式事実審理や陪審員に関する制度は証拠法の授業で習うようになっています。
授業を教えている教授は、ロースクールを卒業後、連邦最高裁判事の一人であるScaliaの下でClerkshipを行い、ワシントンDCの大手法律事務所に数年間弁護士として勤務していた経歴を持ちます。そのため、教授の個人的な経験等が授業に盛り込まれていて、とてもおもしろい内容の授業だと感じています。ディスカバリー手続きを学ぶ週には、教授がかつて勤務していた法律事務所から招かれた訴訟専門の弁護士が授業の中でプレゼンテーションを行いました。プレゼンテーションを通じ、「訴訟社会」と呼ばれるアメリカの制度的な裏付けに関する実態を垣間見る気分でした。
この授業において、日本の法学部(恐らく法科大学院も)における授業と最も異なる点は、判例についての法的な分析にとどまらず、政治的な分析も行う点です(授業の違いそれ自体というよりも、両国の司法制度の違いに起因する事柄だとは思いますが)。判例の意見で過去の判例とかみ合わない部分等を教授が指摘して、個々の裁判官の政治的なバックグラウンドを用いた説明が行われます。ある学生が「民事訴訟法の授業で政治の話をするのはおかしい」という趣旨の意見を教授に出したところ、教授が「アメリカ合衆国では、法理論が形成される過程で現実に重要な要素となっている政治的な側面をも考慮しないと法実務は行えない」と返答したのが印象的でした。
3. その他
日々予習・復習に追われて勉強が中心となるロースクール生活ですが、その他にも色々なイベントがあります。特に、私はキャンパス近くにあるロースクール生専用の「Barbizon(いまだに名前の由来がわかりません)」というアパートに住んでいるため、同級生とも顔を合わせる機会が多いです。(私がBarbizon住民であることから、「毎日夜飲み歩いている」とか「勉強していない」と思われていたことがあるようですが、全くの誤解です!)
金曜日の夜はBarbizonの裏手にあるバルコニーでビールや食べ物を持ち寄ってLL.M.生を中心としたパーティーが開かれるという習慣がなぜか一時期ありました。ロースクールに近いという地の利もあり、LL.M.のみではなくJ.D.の学生もこの会には頻繁に訪れていたので、授業以外でロースクール生と交流を図るには絶好の機会でした。ただ、寒くなるにつれてバルコニーで開催されるこの会を維持するのは難しくなり、10月末には残念ながら廃止となりました。
アメリカ大統領選挙が近づくに従って、ロースクール内外で開かれたイベントに参加することができました。ナッシュビルで候補者の討論会が開かれた際には、同級生とともに会場まで足を運んで現地の熱気を目の当たりにしました。また、開票日には大学近くのバーで民主党を支持するロースクール生がテレビ中継をみるという集まりがありましたが、それにも参加しました。午後十時にオバマ当選確実の発表が行われた瞬間、バーは歓喜で溢れかえっていました。印象的だったのは、その場で多くの学生が涙を流していたことです。アメリカの歴史に鑑みて、今回の大統領選挙ではアフリカ系アメリカ人であるオバマが大統領になることの象徴的な意味合いが大きかったことを改めて感じました。
1. 秋学期のスケジュール
|
AM | PM |
Mon | Contracts | Civil Procedure |
Tue | Contracts | Civil Procedure |
Wed | Contracts | Civil Procedure |
Thu | Conflicts of Law | Writing |
Fri | Conflicts of Law | Legal Research and Writing |
Sat | 惰眠 | 予習等 |
Sun | 予習 | 予習 |
2. 授業の様子
まだ紹介されていない、Civil Procedureの授業について書かせていただきます。この授業は、ロースクールの一年生が履修する基礎的な科目のひとつで、アメリカ連邦法上の民事訴訟手続きを学びます。ただし、アメリカの民事訴訟法は範囲が膨大なため、この授業では主に正式事実審理前に問題となる裁判管轄やディスカバリー手続き等に焦点が当てられています。民事訴訟法関連のその他のトピックは、他の授業でカバーされているようです。たとえば、クラス・アクションについてはComplex Litigationという授業で独立して教えられていて、また正式事実審理や陪審員に関する制度は証拠法の授業で習うようになっています。
授業を教えている教授は、ロースクールを卒業後、連邦最高裁判事の一人であるScaliaの下でClerkshipを行い、ワシントンDCの大手法律事務所に数年間弁護士として勤務していた経歴を持ちます。そのため、教授の個人的な経験等が授業に盛り込まれていて、とてもおもしろい内容の授業だと感じています。ディスカバリー手続きを学ぶ週には、教授がかつて勤務していた法律事務所から招かれた訴訟専門の弁護士が授業の中でプレゼンテーションを行いました。プレゼンテーションを通じ、「訴訟社会」と呼ばれるアメリカの制度的な裏付けに関する実態を垣間見る気分でした。
この授業において、日本の法学部(恐らく法科大学院も)における授業と最も異なる点は、判例についての法的な分析にとどまらず、政治的な分析も行う点です(授業の違いそれ自体というよりも、両国の司法制度の違いに起因する事柄だとは思いますが)。判例の意見で過去の判例とかみ合わない部分等を教授が指摘して、個々の裁判官の政治的なバックグラウンドを用いた説明が行われます。ある学生が「民事訴訟法の授業で政治の話をするのはおかしい」という趣旨の意見を教授に出したところ、教授が「アメリカ合衆国では、法理論が形成される過程で現実に重要な要素となっている政治的な側面をも考慮しないと法実務は行えない」と返答したのが印象的でした。
3. その他
日々予習・復習に追われて勉強が中心となるロースクール生活ですが、その他にも色々なイベントがあります。特に、私はキャンパス近くにあるロースクール生専用の「Barbizon(いまだに名前の由来がわかりません)」というアパートに住んでいるため、同級生とも顔を合わせる機会が多いです。(私がBarbizon住民であることから、「毎日夜飲み歩いている」とか「勉強していない」と思われていたことがあるようですが、全くの誤解です!)
金曜日の夜はBarbizonの裏手にあるバルコニーでビールや食べ物を持ち寄ってLL.M.生を中心としたパーティーが開かれるという習慣がなぜか一時期ありました。ロースクールに近いという地の利もあり、LL.M.のみではなくJ.D.の学生もこの会には頻繁に訪れていたので、授業以外でロースクール生と交流を図るには絶好の機会でした。ただ、寒くなるにつれてバルコニーで開催されるこの会を維持するのは難しくなり、10月末には残念ながら廃止となりました。
アメリカ大統領選挙が近づくに従って、ロースクール内外で開かれたイベントに参加することができました。ナッシュビルで候補者の討論会が開かれた際には、同級生とともに会場まで足を運んで現地の熱気を目の当たりにしました。また、開票日には大学近くのバーで民主党を支持するロースクール生がテレビ中継をみるという集まりがありましたが、それにも参加しました。午後十時にオバマ当選確実の発表が行われた瞬間、バーは歓喜で溢れかえっていました。印象的だったのは、その場で多くの学生が涙を流していたことです。アメリカの歴史に鑑みて、今回の大統領選挙ではアフリカ系アメリカ人であるオバマが大統領になることの象徴的な意味合いが大きかったことを改めて感じました。