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番外編その4 卒業式(Commencement) [週替わり日記(2006-2007)]

 とうとうこの日がやってきました。5月11日の金曜日、青く澄み切った空の下、Vanderbilt University Law Schoolの卒業式が行われたのです。LL.M.の人たちにとってはあっという間の一年間、J.D.にとっては山あり谷ありの三年間、全ての苦行が報われる瞬間です。誰もが、つらくそれでも楽しかった日々を思い出し、晴れがましい表情をしています。

 米国では一般的に卒業式のことを、GraduationではなくCommencementといいます。Commencementは「始まり」の意味も持ち、ラテン語のCom(一緒に)+Initiare(行く)を語源としています。すなわち、卒業は終わりではなく、これからの新しい人生の始まりである、という意味なのです。われわれ卒業生は、これからDoctor of JurisprudenceもしくはMaster of Lawとして、社会に出て行く、もしくは戻って行くのです。

 まずは朝8時に全員集合して記念撮影。今年の卒業生はJ.D.が224名、LL.M.が19名と、比較的小規模の当校にとっては、過去最大の人数となりました。

 この写真は、ロースクールの正面でとったJ.D.卒業生たちです。卒業生は写真のようにレガリアと呼ばれる特別なガウンと帽子をかぶります。後ろのほうから、「最前列の諸君、足はきちんと閉じないとだめだよ」と野次が飛んできます。実は、入学式の当日も集合写真をとったのですが、そのときは女性が最前列に並んでいたため、足の開き具合でスカートの中が見えそうになってしまった人がいたのです。
 
 ガウンの中は何を着ても良いのですが、たいていの男性はシャツにネクタイをして長ズボン、女性はワンピースやパンツスーツがほとんどです。しかしそこはさすがアメリカで、Tシャツ短パン、はだしにサンダルなどという学生もちらほらいます。彼らは後ほどの式で壇上に上がるときも、そのままの格好で堂々としていました。

 こちらはLL.M.の卒業生の皆さんです。写真撮影の合間なので、みなさんリラックスした表情です。

 9時から学校全体の卒業式があり、その後は学部ごとに分かれて卒業式を行います。10時半からはいよいよロースクールの卒業式が、ロースクールの隣の広場(Alumni Loan)で行われます。スコールが予想されていたので、大きなテントが張り巡らされ、その下に卒業生と家族が座りました。テントの中は蒸し暑く、レガリアを着た学生にとっては蒸し風呂のようです。最初に校長(Dean)と教授のスピーチがありました。「皆さん暑くて大変でしょうから私のスピーチは短くしましょう」という前置きで始まりましたが、われわれには果てしなく続くように感じられました。

 次に、4つの賞の表彰が行われました。一つ目は、学年のトップに与えられるFounders Medal。カナダからの留学生(留学生といっても母国語は英語ですが)で、ローレビューのメンバーでもあり、多数の科目で最優秀賞を受賞してきたK君が受賞しました。それから、最優秀論文賞および最優秀貢献賞の表彰があり、最後はLL.M.として最も優秀な論文を書いた人に与えられるLL.M. Research Prizeが発表され、なんと日本人LL.M.のMayさんが受賞されました。おめでとうございます!ちなみに、他の22の賞は卒業冊子への掲載という形で発表され、わたくしJ.D.三年生のMも、国際法と論文に関する2つの賞をこっそり受賞しました。

 そしてお待ちかね、学生一人一人が壇上に上がって卒業証書を受け取る授与式です。まずLL.M.の皆さんが壇上に上がった後、J.D.の一番手は、M.D.(メディカル・ドクター)とのジョイントディグリーを習得したC君で、驚きの声があちこちで上がりました。J.D.とM.D.はそれぞれ3年と4年かかり、ジョイントしたとしても6年かかる大変な学位で、とても珍しいのです。

 ジョイントディグリー取得者の後には、J.D.単独の取得者がアルファベット順に壇上に呼ばれていきます。勿論拍手はみなしてもらえるのですが、人気者や、大家族の応援があるものに対しては大きな声援が飛び交います。とくにアフリカ系アメリカ人の応援のノリはすさまじく、壇上の学生が恥ずかしがって恐縮しまうほどでした。私はアルファベットの最後の方で、しかも直前にアフリカ系アメリカ人が連続して、会場全体が盛り上がっていました。もし私の番でシーンとなってしまったらどうしようと思っていましたが、幸いに友人の何人かが大声を上げてくれ、気持ちよく証書を受け取ることができました。

 最後はシャンパンとイチゴで乾杯。これでロースクールでの全ての行事が終わり、学生たちはキャンパスを去り、司法試験を受験したり母国に帰ったり、別々の人生を歩んでいくのです。


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