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J.D.攻略法その4 入学前準備編 [J.D.攻略法]

 この攻略法もだいぶご無沙汰してしまいました、J.D.三年生のMです。今年度夏からの留学を目指されている皆さんも、そろそろ合否が出揃い、渡航準備を進められていることと思います。そこで今回は、留学前に私が準備したこと、もしくは私の経験からやっておけばよかったと思うことをお話します。J.D.を念頭に置いていますが、LL.M.を目指していらっしゃる方にも共通の部分がありますので、参考にしていただければ幸いです。なお、具体的なご質問に関してはFAQ http://blog.so-net.ne.jp/vanderbilt-law-japan/archive/c20362377 の記事でもお答えしていますので、ご参照ください。カバーされていない事項につきましては、いつでも  まで気軽にお問い合わせください。

(1) ロースクールの全体像を理解する
 
 最初にするべきなのは、ロースクールでは何が行われているのか、何が必要とされているのかを大まかに知ることです。もしまだお読みでなければ、以下の本を一読されることをお勧めします。

① 阿川尚之「アメリカンロイヤーの誕生」: 日本人のJ.D.留学の元祖ともいえる阿川さんの留学体験記。20年以上前のロースクールの様子が描かれていますが、これからロースクール留学する方にとっても大変参考になる本だと思います。

② ダグラス・フリーマン「リーガル・エリートたちの挑戦」: 日本の弁護士資格も持っている著者のコロンビアJ.D.留学記。著者はネイティブ並みの英語力を有するため、私のようなドメスティックな日本人にとってはあまり参考にならない部分もありますが、最近のロースクールの動向を知ることができます。

③ 野村憲弘「ロースクールって何」: ペンシルバニアLL.M.留学記。平易で軽妙な文章。LL.M.の方には特にお勧めです。

④ Robert H. Miller 「Law School Confidential : A Complete Guide to the Law School Experience (Paperback)」: J.D.を目指す人は必ず読んでください。ハーバード、ペンシルバニア、バンダービルトなどの近年のアメリカ人J.D.卒業生によって編集されたロースクールサバイバルマニュアル。「机とベッドだけはしっかりした良いものを」「印刷スピードの速いプリンターを」といった些細な点ではあるものの重要な経験者ならではのアドバイスだけでなく、ブリーフ(要点まとめノート)の作り方や試験勉強の仕方まで、サバイバルに必要なことがわかりやすく網羅されています。

(2) 英語力を上げる
 
 多くの日本人にとって最も壁となるのは、法律そのものの難しさよりも、基礎的な英語力の問題であると思います。予習として大量のテキストを読むために必要なリーディング、試験や課題で必要になるライティング、授業を理解するためのリスニング、授業で当てられたときにきちんと答えられるためのスピーキング、というように、全ての要素がかかわってきます。

 リーディング・ライティング・リスニングの三つの力を伸ばすには、次の項目で紹介するように、一年生の基礎科目を予習をしながら、というのが最も効果的だと思います。スピーキングに関しては、英語学校に通ったり、ネイティブの友人を作ったりというような日頃の地道な努力が必要でしょう。

 ちなみに、「留学すれば英語力は飛躍的に上がる」というのは、必ずしも正しくはありません。もちろん才能、努力などによる個人差はありますが、実際留学された方が感じるのは「思ったほど英語は伸びない」ということではないでしょうか。これは特にスピーキングについて当てはまります。それは第一に、20歳を過ぎると語学に関する脳の構造が固定されてしまうこと(バンダービルトの語学学校の先生が仰っていました)、そして第二に、ロースクールの勉強はほとんどの時間は「ケースブックを読んでそれをノートにまとめる」という孤独な作業であることによります。
  
(3) 一年生の基礎科目を予習する
 
 ロースクール前の準備段階では、各科目の概要をつかみつつ、前述のリーディング・ライティング・リスニングの三つの力を伸ばすことが重要です。また、授業中のノートをパソコンで取ることができるように、英語でのタイピングもマスターするべきです。ノートを手書きでとっている人は、クラスにせいぜい1・2人しかいません。これは、タイピングのほうが早くノートを取れること、見やすいこと、復習時にまとめノート(アウトライン)を作りやすいこと、クラスメイトとの共有がしやすいこと、などの理由によります。試験もパソコンで受験したほうが、早さ・読みやすさ・編集のしやすさで断然有利(というよりも手書きだと断然不利)です。

 私がとった方法は、Gilbert社が出しているLaw School LegendというCDシリーズを購入して、CDを聞きながらノートをとる訓練をするものでした。このシリーズは、現役の著名なロースクールの教授が、1年分の授業を数時間に凝縮して、全く知識のないものにとってもわかりやすく要点を解説してくれるものです。慣れるまでは難しいかもしれませんが、実際のソクラテスメソッドによる授業よりもはるかにわかりやすい講義形式ですので、しっかり訓練してください。酷な言い方になるかもしれませんが、このレベルについていけない場合は、J.D.として生き残るのは大変難しいと思います。

 また、夏休みの間、BarBri、 LawPreview といった予備校が、ロースクール準備講座を全米各地で開催しています。それぞれ一週間程度の集中講義で、一年生の科目を一通り概説してくれるとともに、ブリーフの書き方、ロースクールサバイバルのコツなども伝授してくれますので、お勧めです。私の場合、ロサンゼルスに2週間滞在し、BarBriとLawPreviewの講座を二週連続で受講しました。西海岸を中心としたロースクールに進学する学生が集まっていたため、残念ながらバンダービルトに進学するのは私だけでしたが、よい情報交換の機会にもなりました。

(4) その他
  
 さて、いろいろと書いてきましたが、この準備段階であまりに一生懸命になってしまうと、肝心のロースクールが始まる前に燃え尽きてしまう可能性もあります。また、一旦ロースクールが始まってしまったら、家族や友人と過ごしたりする時間は非常に限られてしまいます。ですから、矛盾するようですが、しっかり準備をしながらもバランスの取れた生活を送ることが重要でしょう。


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